もとなおこ『レディー・ヴィクトリアン 1-20』

レディー・ヴィクトリアン 1 (プリンセスコミックス)

レディー・ヴィクトリアン 1 (プリンセスコミックス)

レディー・ヴィクトリアン 2 (プリンセスコミックス)

レディー・ヴィクトリアン 2 (プリンセスコミックス)

レディー・ヴィクトリアン 20 (プリンセスコミックス)

レディー・ヴィクトリアン 20 (プリンセスコミックス)

 必要があって腐海の深層から召喚したので再読。ベタというか、ご都合主義な少女漫画なんだけど、なんか魅かれる作品なんだよな。やっぱ元気でポジティブな主人公ってのは、物語を推進していくパワーがあるな。
 田舎から家庭教師(ガヴァネス)となるべくロンドンに出てきた少女ベル。ロンドンにあこがれ、立派なレディとなるべく、勇躍故郷を出てきた彼女は、手荷物を遺体とすり替えられて殺人の容疑をかけられ、監獄に放り込まれることになる。彼女に救いの手を差し伸べたのが雑誌を出版しているノエル・スコットと「銀のレディー」とたたえられるレスターベリー侯爵令嬢のエセルだった。その侯爵令嬢エセルは、実は男性。ベルは偶然から、病死した本人の身代わりとするために、救貧院からそっくりの子供を連れてきて仕立て上げたこと、人気作家アージェント・グレイと二重生活をしている事情を知ることになる。
 ヒロイン、ベルとノエルの恋を中心に、エセルの正体をめぐるドタバタ、エセルの兄のマーティン卿・ベル・ノエルの三角関係を軸に物語が進んでいく。ラストの五巻ほどはエセル/アージェントの二重生活の発展的解消というか、人間的成長といった展開。エセル/アージェントの、レディー中のレディーで女装の時は心の中まで女性になりきってしまうのに対し、アージェントの時にはコクニー訛のやんちゃな男の子というギャップがやはりおもしろい。
 ポジティブな少女のパワーと悪意が存在しない優しい世界はいいねえ。人生なんぞと言うクソゲーは自分の分だけで十分で、わざわざフィクションでまで追体験したくはない。