奈須きのこ『空の境界:The Garden of sinners 上下』

空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)

 同人版では一回読んでいるけど、講談社ノベルズ版では初めて。いや、ボリュームがすごいな。
 劇場版アニメのテレビ用カットがニコニコ動画で公開されているので、それに合わせて腐海の底から召喚したもの。「直死の魔眼」を持つ少女両儀式と彼女に惚れた黒桐幹也の物語。奈須作品だなあという感想しか出てこないな。たっぷり楽しんだのだが、どう感想をまとめたらいいのやら。
 解説も興味深いな。80年代の伝奇小説ブーム時代の作品を「天皇制-山人」の対立関係のフレームで紹介しているが、そう紹介されると全然おもしろそうに感じない。読んでみればそれなりにおもしろいのだろうけど。どっちかというと、現在の社会では『ブギーポップ』シリーズの統和機構(2000年代頭あたりまでの)のような、巨大すぎて何が中枢かわからない空虚な存在の方がしっくりくるような気がする。何か特定の相手をぶったおせば世の中が良くなるとは思えない時代だし、実際、倒してとってかわったものの方がより悪い可能性が強いし、システムそのものをつぶすと自分が飢えてしまう、そんな世界だしな。体制内改革なんてのは、いつの時代も意気が上がらないものだ。そういう時代に、明確な悪なり、敵なりは設定しにくい。