安田均・山本弘編『スチャラカ冒険隊、南へ』

 古いラノベ発掘、13冊目。
 「スチャラカ冒険隊」のリプレイ後のアフターストーリーを短編集の形で描いたもの。リプレイ後はタラントから海を目指し南下している。ベルダイン、さらにアリシアンの故郷であるガルガライスへ。最初は山本弘著の、ガルガライスへ向かう途中、リプレイラストで倒したダークエルフがスペクターとなって報復にやってくる話。ゲームマスターだけに、リプレイ中の話も盛り込んで、らしいコメディになっている。彼らだと、こんな感じのコメディになりそう。
 その後は、ガルガライスでの冒険。ユズとケッチャが喧嘩してパーティを飛びだしたり、人を呑み込む魔法の壺の中で冒険したり、迷宮探索の途中でザボとケッチャが喧嘩したり、マッドな魔導師に上級版ゾンビにされそうになったり。
 本書の中では、葛西伸哉の「かくもささやかな凱歌」と中川政博の「真実の鏡」の新人二人の作品が、雰囲気も良くお気に入り。前者は、魔法万能の古代王国で魔法が使えなかった人物が、自分の存在理由を込めて作り上げた機械仕掛けの迷宮の謎を解く話。登場人物のコンプレックスとそれを乗り越えようとする意思が良い。後者はザボとケッチャのすれ違いを魔法のアイテムが増幅してしまう話。決定的なところで、「真実の鏡」が壊されるという宙ぶらりんな感じが逆にしっくりとくる。