吉田智子『江戸創業金魚卸問屋の金魚のはなし』

 こういう老舗のお店が、自分の商売について語った本って、おもしろいんだよな。この本はカラー写真が多く収録されていて、ビジュアル的にも楽しい。
 しかし、東京の中心部に池も必要な金魚の卸問屋が良く頑張っているなあ。戦災に水害を乗り越えて、同じ場所で経営を続けているのがすごい。確かにビルを建てれば、そのほうが収益が高そうだけど、あえてそれをしない志がすばらしい。いろいろと、おもしろい情報が挟み込まれている。もともと金魚は上から見て楽しむもので、ガラスの金魚鉢は昭和になってから普及したものなのだそうで。江戸時代にはガラスは貴重品だったんだよな。当時は陶磁器の鉢で飼っていたそうで。狭いところで大量に買わない限りはエアレーションは必要ないとか、外気温が一番良くて、温度が急激に変化するところの方が苦手なのだそうだとか。桃の節句に供える習慣もおもしろい。
 全体としては、豆知識、歴史、品種紹介、飼い方、金魚の重要性といった構成。金魚の魅力を平易に紹介してくれる。
 これを見て金魚を飼いたくなったけど、場所がなあ。金魚って、長く飼うと意外と大きくなるから設備的にきついものが。最初は金魚鉢でもいいんだろうけど。とりあえず、個人的にはオーソドックスな和金が好みかな。