今年で発売30周年を迎えた家庭用テレビゲーム機「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」。世界で6千万台以上のヒットとなり、子どもたちの遊びの文化を大きく変えた伝説的ゲーム機について、再考する本が相次いで刊行されている。
「ファミコンとその時代」(NTT出版・2730円)は、ファミコン史の決定版ともいえる一冊。任天堂でファミコンの開発責任者を務めた上村雅之さんが著者の一人に名を連ね、当時の貴重な資料や証言を駆使しながら、開発前史や北米進出の経緯などを克明に描いている。
ブーム当時は母親層を中心に「ゲーム中毒」への懸念や批判が強かった。だが本書は、その1980年代にファミコンと出合い、デジタル機器の操作に慣れ親しんだ世代が、携帯電話やモバイル端末の先導的消費者となり、情報系ビジネスの裾野を広げていったと指摘する。
一方、多根清史さんらフリーライター3人が手がけた「超ファミコン」(太田出版・1260円)は、「ゲームはいまだファミコンを超えてはいない!!」という刺激的なコピーを掲げ、懐かしの名作から、駄作を意味する「クソゲー」まで約100本のゲームを、郷愁の思いを込めて徹底紹介している。
近年は、家庭用テレビゲームよりも、スマートフォン(多機能携帯電話)のゲームアプリの方が人気を集めている。世界中の人とネットで手軽につながるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)機能も昔はなかった。
だが人気ゲームの骨格はすでにファミコン時代にできあがっていたことが本書を読むと分かる。今より機能がはるかに低かったからこそ、その限界に挑戦したシンプルな面白さが生まれたといえるだろう。
ファミコンの歴史に関する本二冊の紹介。