今和泉隆行『みんなの空想地図』

みんなの空想地図

みんなの空想地図

 空想都市「中村(なごむる)市」の地図を制作している人の著書。なぜ、空想地図を描くようになったか、生い立ち。さらには、中村市の紹介。大学進学後の独自の都市比較の方法についての紹介など。終点までバスに乗りに行くということから都市の流れを体感し、鹿児島への帰省によって都市の比較の視点とさらに中途で他の都市を訪れる機会を得た。それが、あの昭文社の地図と見間違えるような中村市の精巧さ基盤にあるんだな。本当に地図を見ていて、それらしいのがすごい。
 地方都市に住んでいると、あまり公共交通機関を利用しないからこういうわざわざバスに乗るというのが興味深いな。あと、ほとんど行ったことがないから、関東都市圏というものがいまいち想像しづらい。
 本書を読んでいて気になったのだが、駅から駅へつながるバス路線って、関東では普通なのだろうか。バス路線を鉄道のフィーダー的な役割と考えると、そこから離れる方向に設置されるんじゃないだろうかと思うのだが。駅から駅のルートが、駅の中間地域にむけてのフィーダー路線として機能するのかな。
 ラストの九州の公共交通機関の頻度の図や100万人単位で区切ったインフォグラフィックスは非常におもしろい。熊本が福岡の都市圏の引力に引き込まれつつある状況や長崎県佐世保と長崎の両都市圏に別れる様、大都市圏や瀬戸内海沿岸に人口が偏っている様が読み取れる。


 私自身は、トールキン経由で空想地図に興味を持ったけど、結局人間の歴史展開のほうに比重が移ってしまったんだよな。そもそも、地図に表現された人間生活が、どのような地形的、歴史的展開に制約されているのかとか。ファンタジーだと何千年も同じような展開を繰り返すけど、現実の人類の歴史は1000年ほどでとんでもなく変わっているけどなぜかとか。そっちの方向。そういうのを考えだすと、変数が多すぎて地図が描けなくなるという。いかに自然な地形を作るかという時点で難しい。


 空想地図を作っている人がけっこういるというのも興味深い。138ページあたりから、ページ下のコラムで紹介されている。2ちゃんねるのスレッドをはじめ、空想地図の趣味者のコミュニティがあるんだな。
ANOTHER CITY B.F.M.
MAP CREATION
架空都市 畝丘
散策家しかすけ
想像地図研究所


 著者のサイト。
空想都市へ行こう!
地理人研究所