角幡唯介『空白の五マイル:チベット、世界最大のツァンポー峡谷に挑む』

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む [著]角幡唯介 - 最相葉月(ノンフィクションライター) - 本の達人 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイトを見て、読みたくなったのでさっそく。ツアンポーというと岩波文庫に『ツアンポー峡谷の謎』があったなというくらいの認識だったが、そこが大勢の探検家をひきつけてきた理由も解説されていて、分かりやすい。
 2002年末から2003年初頭と2009年末の二度の探検行、特に前者が主体となっている。2002年には、規制がゆるいなか、大屈曲部北端のザチュの村を拠点に現地の人の支援をうけながら、3度の探検行で「空白の五マイル」の全域を踏査している。やぶこきと石壁のぼり、更にダニに悩まされるという、なんとも大変そうな行程。最終的には「ホクドルン」の下の洞窟と途中の未知の滝を発見している。
 2009年は、他の探検家の後を追うべく、上流のギャラの村からたどっていく。しかし、2008年に起きた暴動の結果、チベットへの入域や探検活動が規制されていて、苦労を強いられることになる。摘発を怖れて、住民に協力を拒絶された結果、踏み分け道をたどるのも苦労し、食糧の輸送調達にも苦労することになる。結果として、虹の滝の手前の崖で撤退を決意することになる。しかし、用意していった食料が一日1000カロリーというのは、完全に足りていないよなあ。ルクの村への峠を越え、ワイヤー橋を渡って人家にたどり着くが、橋を見つけたときのところが印象的。その後は、警察に送られて帰還している。尋問したチベット人の警部も印象的だった。
 キントゥプから、ベイリー、キングドン=ウォード、ブリーシャーズ、ベーカーらの探検の歴史、そして日中合同隊のカヌー事故など、ツアンポーに挑んできた人々の歴史も興味深かった。
 しかし、現在は「冒険」というのが難しいよなあ。ツアンポー峡谷もグーグルマップで写真を見ることができる時代だし。