井田茂『系外惑星:宇宙と生命のナゾを解く』

系外惑星―宇宙と生命のナゾを解く (ちくまプリマー新書)

系外惑星―宇宙と生命のナゾを解く (ちくまプリマー新書)

 先日読んだ『異形の惑星』の著者の別の本。2012年と、先の著作の9年後の刊行だけに、その後の観測成果が取り入れられている。観測精度が上がり、「スーパーアース」が見出されるようになったり、ケプラー宇宙望遠鏡やさまざまな観測努力による発見数の増加によっておおまかな傾向が分かるようになったり。一方で、惑星系生成に関する理論的枠組みは、先の著作から基本的には変わっていないようだ。原始惑星系円盤の形成とそこに含まれる固体の塵が集積して惑星が形成される。
 ただ、『系外惑星』とのタイトルに比して、系外惑星を扱った部分がかなり少ないのも気になる。基本的には、太陽系の話が多い印象。惑星系生成理論が、太陽系形成理論にかなりの部分を追っているので当然と言えば当然なのだが、微妙に肩透かし感が。あと、平易に語ろうとして、逆に分かりにくくなっているような気もする。
 太陽系の形成もいろいろとわかっていないことが多いんだなということが分かるのも、系外惑星発見の効用かな。原始円盤のガスとの力学的摩擦による惑星の落下問題が、ホット・ジュピターなどの形成の原因として、理論の組み立てに利用されるようになると、逆に太陽系ではなんで惑星の落下が起こらなかったのかが不思議で仕方なくなってくる。
 本書では、先著に続いて、生命の遍在に楽観的だが、どうなんだろうなあ。地球でも、早い段階で生命が誕生していることを考えると、液体の水が長期的に存在する場所では、意外にどこにでもいるかもしれない。しかし、恒星間で観測できるレベルまで環境に影響を与えうる生物は少ないんじゃなかろうか。光合成生物が出現すれば、大気に大量の酸素が含まれ、遠距離から検出できる可能性が高まるが。そこまでたどり着いた生物がどの程度いるのか。あと、地球とはまったく違う形の生物がいるとしたら、どんな存在なんだろうかとか。


 メモ:

 だが、その惑星系でH2Oをその惑星に運ぶ仕組みがなければ、ハビタブル・ゾーンに十分な大きさの地球型惑星があっても、そこには海もないし、生命の存在も期待できないというわけだ。オールトの雲は想像しているだけで、誰もその存在を実際に観測した人はいない。小惑星帯は形成過程がよくわからない。系外のハビタブル惑星を考えるには、まずは、地球へH2Oを運んだ仕組みの解明、その候補となるオールトの雲小惑星帯の形成過程を明らかにする必要があるだろう。他にも、地球がいるあたりで氷が凝縮した可能性や、実は水素大気が当時存在していて、地表のマグマと反応してH2Oが作られた可能性なども検討する必要がある。地球に海があることはとても不思議なことなのだ。p.153-4

 地球に水があること自体が、けっこうな謎なのだとか。へえ。考えもしなかった。地球とか、太陽系の成因にも、相当謎があるんだな。