内田宗治『凸凹地図でわかった! 「水」が教えてくれる東京の微地形散歩』

「水」が教えてくれる東京の微地形散歩

「水」が教えてくれる東京の微地形散歩

 名前の通り、水が関係する川や谷、湧水などの地形を追った本。カシミール3Dを使った現在の標高メッシュマップと明治の地形図を使った地形表現が興味深い。あと、この手の地形本って、やはり丘陵地の山の手側に偏っている感が大きいなあ。確かに、江戸の東半分の低地は、地形的にはあまり面白みのないのは確かなんだけれど。
 江戸開府にともなう神田川の付け替えや江戸城の堀の水源の話。神田川北の崖上に営まれた椿山荘などの権力者の屋敷、山の手の丘陵と谷が織り成す複雑な地形と丘陵の上下で異なる町並みの話、渋谷川石神井川など川の変化、玉川上水や三田用水など江戸の水道がいかに地形を利用しているか、そしてその変遷など。
 千鳥が淵で谷をせき止めてそこに流れこむ水を堀の水源にしたり、堀の標高が相当違うって話がおもしろかった。あと、けっこう東京の中心部まで、海水が遡上してくるんだな。不忍池の方向に流れていた石神井川王子駅あたりで丘陵を突き破り、結果藍染川が取り残されたり、滝野川の渓谷が侵食されたりという話。玉川上水がいかに地形を利用しているかとか。取水地から段丘上まで同じ標高の場所を結んで水を通し、段丘崖を登っていくような水路を作った話とか。
 あとは、弁慶濠が決壊したらどうなるかとか、古川にダムを作ってみるとか、地形シミュレーションの話もおもしろい。