宮澤伊織『不本意ながらも魔法使い』

不本意ながらも魔法使い (一迅社文庫)

不本意ながらも魔法使い (一迅社文庫)

 不本意ながらも魔法使い - 妄言銃にあった、女『ファファード&グレイマウザー』という魅力的なフレーズに惹かれて、思わず手を出してしまった。肝心の『ファファード&グレイマウザー』本体の方が十年以上前に読んで、ほぼ完全に忘れてしまっているのだが。章のタイトルに「二剣士」という単語が入っていたり、アーシェラが剣で切れないものは全然だめってあたりは意識しているのかなと感じた。まあ、アーシェラとシルカのキャラクターそのものは、割と普通の今風キャラだけど。アーシェラの語尾の「です」は蛮族のなまりってことなのだろうか。『きんいろモザイク』のカレンみたいなものか。
 人間の王国ジアルタールは七人の魔王と彼らが率いる魔族の侵略にさらされていた。「人間の魔法使い」マガダリアスは老いて衰えた体を捨て、新たな体を得るべく「器」となる若者を召還する。しかし、老魔法使いは、魔法を、その若者天道戒に注入したところで力尽きる。さらに、老魔法使いの死を察知した七人の魔王が、マガダリアスの蓄積した魔法を入手するべく、やって来て、戒は成り行きから全員を倒す宣言をしてしまうことに。さらには、人間の王国も危機の中で、内部抗争に明け暮れていて。
 こう、ガーッと物語に没入させるようなパワーには欠けるが、手馴れたストーリー運びだな。いきなり最強の魔法使いになったけど、自由に使えない上に、一度使うとガス欠になってしまうというパワーバランスが良い。あとは、アーシェラとシルカの女悪党コンビがなかなか魅力的。
 最後に妖精族の魔王フィンバラを倒して、戒はさらに魔法を手に入れることになるが、世界中の魔法が特定の人物に集まった時に何が起きるのだろうか。