平井松午他編『近世測量絵図のGIS分析:その地域的展開』

近世測量絵図のGIS分析―その地域的展開

近世測量絵図のGIS分析―その地域的展開

 返却期限まで時間がないので、熊本関係のところと後半を流し読み。前半は近世に各地で展開された測量術の展開、後半はGISを使った近世地図の解析。しかし、こういうので普通にArcGISを使ったって出てくるけど、あれ個人で使うにはめちゃくちゃ高いんだよな。あと、「地図の精度」が問題にされていたけど、そのあたりあまり興味ないので、そのあたりでも外れ感が。
 結局、真面目に読んだのは、熊本藩世襲測量家扱った第6章の磯永和貴「熊本藩測量家のネットワーク」のみ。百姓身分で蓄積されていた算術や測量術を、藩校時習館の師範に採用することでとりこみ、時習館が測量術の維持発展の拠点となった。時習館で測量術を教授された者は、武士身分だけでなく、手永の会所役人層も多く、さらに教授を受けた手永役人が地域で伝授したので、広がったという。
 時習館の設置も含む宝暦の改革以後、地域行政が手永に移管されたというのは、近年の熊本藩政史の通説となりつつある。用水路や架橋、干拓などの土木事業の実務を担った手永会所で測量術が必要とされ、人材が蓄積されたのは、そのような流れに照らして納得できるところ。一方で、時習館で測量術を伝授された武士身分、特に100石クラスの知行取りは、その技術をどのように利用したのだろうか。単にお飾りの技術にしては、それなりの人数が学んでいるだけに、規模が大きいように感じるのだが。
 「先祖附け」や「町在」を史料に利用しているのが興味深い。あと、世襲測量家から池辺啓太や牛島五一郎のように、洋学や軍事技術方面に向った人が多いのも興味深い。