青木謙知『ボーイング787はいかにつくられたか:初代モデル1から最新787まで、世界の航空史を彩る歴代名機に迫る!!』

 タイトルと相違して、787の話は添え物程度。むしろ、ボーイングの歴史というべき本。
 787の特色、現在生産中の旅客機、ボーイング社の歴史、宇宙関連の事業、合併吸収されたマクダネル・ダグラスの歴史という構成。
 1916年だから、第一次世界大戦の真っ最中の創業だったんだな。その後、陸海軍双方に単座の戦闘機を納入しつつ、郵便輸送機を製造。そこから、旅客機・多発爆撃機へ発展。旅客機メーカーのイメージが強いが、第二次世界大戦直後あたりまでは、むしろ軍用機メーカーの色彩が濃かったのだな。1930年代後半に、急速に航空機技術が発達、民間航空機も全金属単葉双発と一気に機体のスタイルが変わる。ここから、第二次世界大戦をはさんで客室与圧、四発、乗客数十人レベルの機体に発展するが、この時期、むしろボーイングは出遅れて、ダグラスの後塵を拝すことになる。その起死回生の策として、ジェット旅客機を投入し、707の開発となる。その後、軍用機の競争試作に負け続け、旅客機主体のメーカーとなっていく。現在の旅客機メーカーの雄としての姿は、意図してのものではなかったのだな。あと、ダグラスがあったころは、民間機の競争はもっと激しかったのだろうなとも。
 第5章は、ボーイングの宇宙産業。もともと関わっていたが、冷戦後のメーカーの買収で、打ち上げから衛星まで一貫したメーカーになったと。この本は2009年のものだが、その後、スペースシャトルの退役、アレスロケットは不調といった状況で、アメリカの宇宙開発はどこに行くのだろうか。
 最後は、ボーイングに吸収されたダグラス社の歴史。大戦直前から戦後、ベストセラーになったDC-3を中心に、合併後も生産がつづけられたMD-95(717)に至るまで。個人的には、DC-9系統のスリムなボディに細い翼、機体後部に取り付けられたエンジンのスマートな姿は好きなんだけどな。合併で全部生産中止されてしまったと。
 1930年代末の、ボーイング・モノメイルやモデル247、ヴァルティーV-1、ロッキードL-10エレクトラ、DC-2/3など、双発旅客機の時代が一番好みかも。


 以下、メモ:

 これによりユナイテッド・エアクラフト&トランスポート社も解体されることとなり、輸送事業部門はユナイテッド航空となりました。こうした経緯からもわかるとおり、ボーイング社とユナイテッド航空は深いつながりをもっています。ジェット旅客機の時代になっても、その機体仕様の確定にユナイテッド航空の意見などが強く反映されていたのも、この歴史的な背景とは無縁とはいえませんし、ボーイング社も多くの機種でユナイテッド航空が初期の発注会社になっています。
 一方航空機メーカー側は、ユナイテッド・エアクラフト社で一本化することを考えていました。しかしこれにボーイング社とステアマン社が反発して脱退し、ボーイング社はステアマン社を子会社にして、独立した航空機メーカーとなりました。そのほかの会社はユナイテッド・エアクラフト社に残り、今日でもユナイテッド・テクノロジーズの傘下企業として活動を続けています。p.108-9

 へえ、メーカー側も「ユナイテッド・エアクラフト」社だったのか。で、そこからボーイング社が抜けたと。しかも、現在に続いているのか。