小泉俊雄・阿部三樹『航空写真で現在の土地を読む:地震の危険箇所を知るために』

航空写真で現在(いま)の土地を読む―地震の危険箇所を知るために

航空写真で現在(いま)の土地を読む―地震の危険箇所を知るために

 千葉県の東京湾岸地域を題材に、東日本大震災の被害状況と高度成長期以前の航空写真を利用した、災害に弱い地形のあぶり出しを行った本。浦安・市川・船橋習志野の各市と千葉市の西部あたりが対象。埋立地、旧海岸の砂洲、台地とそれを刻む谷という地勢は共通している。関東って全然土地勘なかったから知らなかったけど、浦安市って、狭い上に、大半が埋立地なんだな。北西部の2割くらいが昔からの集落で、ほかは70年代以降に埋め立てられたのか。千葉市の西側の市も小さいのが多いし。
 結果としては、埋立地は振動・液状化によるリスクが非常に高いこと。続いては、かつては水田として利用されていた谷底低地や旧河道がリスクが高いという。また、斜面の盛土地も、同様にリスクが高いと。一方で、古くから集落として利用されてきた砂洲や自然堤防のリスクは低め、台地上はさらに低いと。当たり前と言えば当たり前の結果が出ている。
 埋立地の危険要因として、埋め立て以前に水深が深かった場所、あるいはポンプ浚渫船の排砂口近くがリスクが高いという指摘が興味深い。排砂口付近では粒の大きい砂がたまり、液状化のリスクが高まる。一方、遠い場所では、細かい泥やシルトがたまり、液状化のリスクは下がる。そして、排砂口の場所に関しては、埋め立て工事中の航空写真を見ると、場所が分かるという。埋立地に土地を買う際には、参考になるだろう。まあ、埋立地に土地を買って、戸建住宅を建てること自体がリスクなんだけど。


 そういえば、本書の航空写真で、実体視できるようになっている写真がいくつかあるけど、今回、初めて実体視に成功した。確かに、立体的に見えておもしろい。まあ、できるときとできないときがあるけど。
ステレオグラム
実体視の原理:いさぼうネット