イスラム国関連

[国際]進撃する「イスラーム国」はイラク政治をどこへ連れて行くのか / 山尾大 / イラク政治 | SYNODOS -シノドス-

 イスラム国の前身組織は、イラクからいったん追い出され、さらにシリアのアルカイダ系組織と敵対して、イラクに舞い戻ったと。モスルの陥落に関しては、バース党関係者が関わった「旧体制のクーデタ」の側面が強いと。これは、前々から指摘されている話だな。
 この後の展開によって、スンニ派シーア派クルド人のそれぞれが、宗派や民族の利害で行動するようになったこと。旧軍系勢力とイスラム国の対立抗争の発生。旧体制・部族連合軍がイスラム国を掃討しつつあると。つーか、モスル・ダムとかあの時点で、イスラム国は守勢に立たされていたのか。で、このモスル陥落が、「中央政界」にも波及し、マリキ首相を引きずりおろす「クーデタ」をまねいたと。
 状況はいったん落ち着いたが、問題は変わっていないと。外部からの介入を嫌う国内世論のため、イスラム国対策が進まない。旧体制勢力を取り込む必要性はわかっているが、過去弾圧を受けた勢力がそれを受け入れない。千日手だな。
 つーか、地元勢力と速攻で決裂していたのは知らなかった。

[国際]ISISについて:池内恵と対談

 へえ。
 イスラム法学者の「ファトア」って、それぞれの法学者が好き勝手出しているものだと思っていたが、それの実効性を担保するために国家権力の後ろ盾が必要なのか。で、イスラム国が「国」として領域を確保しているために、「カリフ復活」もなんとなく説得力を持ちつつあると。まだ、誇大妄想と現実の狭間といった感じらしいが。
 あと、イスラムの根本的な限界は、法と宗教が一致していること自体にあるように思う。山賊まがいの集団でも、イスラム法に則れば、なんとなく社会が運営できてしまう。それ自体が、人間同士で利害を調整し、国を作るという営みを阻んでしまっているんじゃなかろうか。歴史的に見ても、イスラム世界の「国家」って、あんまり長続きしたのないし。
 イスラムで「宗教改革」か。そもそも、根本的に法と宗教が一体化しているから、世俗化すると、宗教そのものが壊れちゃうんだよな。結局、近代啓蒙主義に根を持つ体制は、イスラムと共存できないんじゃないかなと、最近悲観的になりつつある。まあ、西欧の宗教改革も、狂信者の血みどろの争いから、国家が出現したわけで。現在の原理主義の輸出は、宗教改革的といえなくもないかも。あと、東南アジアの現況ってのは、国教会を作って、その手の争いは結構ですとシャットアウトしたイギリスに通じる知恵を感じるな。


 破綻した国家をどうするかって問題は、本当に悩ましいよなあ。どうやって、統治を再建するか。選挙以外のメニューを西側諸国はもっていない。あと、先進国はエグい民族浄化を、だいたい19世紀から20世紀初頭に済ませて、今は人道主義で行動しているから、国民国家形成時の人道危機を座視できない。ここにジレンマがある。「君たちは民主主義の準備が足りていないから、独裁制なり何なりでもうしばらく修行を積みなさい」って、そりゃ口にできないわ。
 「アラブの春」が一段落した現在から見ると、結局、フセインにしろ、アサド家にしろ、結局、独裁者の方がマシだったというしょっぱい現実がなんとも。


 ネットインフラに基づく、浅いアンチ・システム運動か。まあ、私も、どちらかと言うと浅いアンチシステム運動側なんだけどね。