J.E.チェンバレン『馬の自然史』

馬の自然誌

馬の自然誌

 うーむ。著者の馬に対する思いの深さは伝わってくるが、「歴史の本」としてはダメだろう、これ。創作と歴史的エピソードと著者の馬論がごっちゃになって、しかも時系列で整理されているわけでもないというのが。単純に、馬の歴史について知りたければ、本村凌二の『馬の世界史』とか、川又 正智『ウマ駆ける古代アジア』あたりを読んだほうがいいんじゃなかろうか。著名なヨーロッパの調教師とかが注釈なしに出てきても、乗馬の歴史に詳しいわけではない人間にはさっぱりわからない。
 まあ、歴史をネタにした馬好きのエッセイとして考えるなら、深く考えることもなくサラサラと読める本ではあると思う。馬と人間がどのようなコミュニケーションをとってきたのか、著者の持論を拝聴する的な。あと、インディアンの馬文化や19世紀あたりの西部の馬に夢中な人々の話みたいなところは、わりとおもしろいんじゃなかろうか。