『珍島巡礼』

 イカロスMookの「ゆく」シリーズの一冊に数えていいのかな。とりあえず、巻末の「刊行物のご案内」に一緒に乗っていたので、見かけて借りてみた。50島以上の島々を、自然が作った景観、植民地支配・近代化・戦争などが刻印を残した島、独特の伝統行事がある島、行くのが難しい島、人工島、その他に分けて紹介している。
 島って、旅情を誘うよなあ。特に瀬戸内海の島々は、歴史的景観や現在進行形の産業的利用、景観など、非常に魅力的。地図で見ていたのだが、しまなみ海道沿いの島々には、尾道から今治にかけて、造船所が多い。また、紹介されている島々でも、工業利用の痕跡が強い。人間の利用が強いのが印象的。70年代の航空写真では、小さな島でも果樹園としてくまなく利用されていたが、現在の航空写真では森に還っている土地も多くて、人間活動の盛衰も見える。
 自然景観では、小豆島が興味深い。島の中に「日本三大渓谷」の一つが存在するという意外性。花崗岩が侵食されて形成されているようで、地図上からでも奇岩がたくさんありそうな雰囲気が。一方で、土砂災害に弱そうな地形もちらほら見えるが。南に突き出た半島は、火山っぽいなだらかさ。人間が作った景観では、鹿島の石積みの果樹園もすごい。
 なんでか知らないが、トカラ列島に惹き付けられるものがあるな。村営フェリーが週二便。それしか、交通手段がないってのもすごいけど。島の形が印象的。宝島の赤木崎って、どうやってできたのだろうか。あるいは、小宝島の北岸の漁港の形。悪石島の港から居住地までの高度差。諏訪之瀬島の崩落の痕跡。口之島南部のカルデラトカラ列島に関しては、村のサイト十島村について 鹿児島県十島村 ここは刻を忘れさせる島が詳しい。
 伊豆諸島の島々も、すごい。大島の裏砂漠とか、馬蹄型カルデラ。三宅島のまさに火山そのものが島になっている姿とか。中心集落が溶岩で消滅とか、ダイナミックすぎる。南側には、いくつも火口跡があるし。