『“軍事遺産”をゆく』

 旧軍関係の建物や要塞跡などを探訪する本。こうしてみると、「軍都」だったわりに、熊本にはあまり軍関係の建物が残っていないなあと。学園大に連隊食堂が第二体育館として、健軍の三菱工場の建屋が自衛隊の整備工場として残っているくらいか。戦後自衛隊の施設になった場所は、建物が保存されている事例が多いな。新築の予算がなかったのか、意識的に保存したのか、どっちかは知らないが。熊本だと、熊本城は史跡として、近代に入ってからの建物は撤去されているし、大江のほうはこれまたいろいろな施設が立地したからな。
 巻頭の「軍都をゆく」で舞鶴習志野を紹介。その後は、海軍関係、陸軍関係、そして「特殊な軍事遺産」として要塞やさまざまな生産施設などの構成。
 舞鶴は旧海軍鎮守府だが、工廠施設や建物が残っている。軍需部の倉庫の赤レンガ建物が圧巻だな。引込み線跡も残っているのが素晴らしい。習志野は騎兵学校や鉄道連隊などが立地した場所。新京成の線路そのものが軍事遺産だよなあ。
 海軍関係は横須賀、館山、大湊、呉、佐世保など。鎮守府ないしそれに順ずる海軍拠点で、戦後海上自衛隊が引き続き利用したというのが、残り方に影響している感じだな。大湊のダムと館山の地下壕が圧巻だな。赤山地下壕というらしいが、どう利用するつもりだったかは明確ではないそうだ。複雑な地下施設が残存し、その一部が公開されているという。地層の模様がきっちりと壁面にみえているのが素晴らしい。
 陸軍関係は、善通寺、津、高田、都城など。連隊以上の規模の部隊の駐屯地で、戦後は陸自の基地として利用されているパターンが多い。結構、がっつりと往時の司令部施設が残っていることや、その建物がけっこう凝っているのが興味深い。あと、宇治の火薬製造所跡が陸自と京大のに引き継がれているが、駐屯地に残る展望塔がかっこいい。
 「特殊な軍事遺産」では、片島魚雷発射試験場がいいな。海上に残る建物や監視塔の廃墟。萌える。豊後森機関庫は行ったことある。扇形の機関庫がそのまま廃墟化しているのが、いいんだよな。あと、猿島要塞や友ヶ島砲台群は、往時の図面とか残っていないのだろうか。
 沖縄と小笠原の戦跡の紹介も印象的。直接戦場にならなかった小笠原の父島母島では、要塞施設がそのまま廃墟化しているという。砲なんかは、保存処置をしたほうがいいんじゃなかろうか。アームストロングの15センチ砲って、明治の骨董品じゃね…