『廃城をゆく』

廃城をゆく (イカロス・ムック)

廃城をゆく (イカロス・ムック)

 戦国時代の土の城をめぐった本。近世に入ってから、その土地の大名に改造された城も多い。あと、けっこう、近世に入ってからの城も混じっているような気がする。近世城も廃城になったものが多いんだな。本文中で、「近代城」って表現されていて、見かけるたびになんともいえない気分になったが。
 この種の廃城は、地図から読み取るのが難しいだけに、他の「廃」シリーズと比べて、ちょっと楽しめなかったかな。むしろ、周囲の城下町とか、そういうのに興味がひきつけられるというか。
 けっこう戦国時代の有名どころに関わる城が多いな。浅井の小谷城、信長の安土城、上杉の春日山城、武田の要害山城、朝倉の一乗谷、毛利の郡山城など。有名敗者の明智光秀石田三成の城も登場。あとは、織田・徳川と武田が争った城なんかも。
 82ページからの「意外な城郭探検隊」や98ページからの「あやしい“天守閣”大図鑑」がいいな。前者は、扱いの悪い城いろいろ。駅に取り込まれた三原城をはじめ、インターチェンジやサービスエリアに取り込まれた城、ホテルや役所が上に立っている城などなど。まあ、無名の城だと、そんなものかもなあ。特に平坦なところに作られた城は。後者は、本来天守閣がなかった城に天守閣を「復元」してしまった事例、考証が怪しい天守閣、近くのレジャー施設に建てられたものなどなど。怪しいのいくらでもあるな。岐阜城が模擬天守のさきがけか。
 「蘇る“廃城”たち」で紹介されている静岡県掛川市横須賀城がいいなあ。河原の玉石を使って石垣を組んでいる。その独特の美しさ。