酷道をゆく 日本全国の「酷い国道」を走る!! (イカロス・ムック)
- 作者: 松波成行
- 出版社/メーカー: イカロス出版
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: ムック
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しかし、同じシリーズの『廃道をゆく』や『廃村をゆく』に比べると、おもしろさが一歩も二歩も劣る感じが。悪い意味で自動車旅行って感じだよな。周りに関心がなくて、しかも、通りにくい場所を罵るような。冒険という点では、車で走れている時点で、「廃道」に劣るし、かといって道路周りの歴史や地理に興味があるわけでもなし。最初のうちはおもしろいけど、一冊通すと飽きてくる。あと、ネタかぶりも多いな。清水峠とか、国道157号の温見峠-能郷間とか。
地理院地図で地形図と1970年代の航空写真、グーグルマップで現在の衛星写真とストリートビューを見ながら、二周したので、ずいぶん時間がかかった。地図を丁寧に見ると、いろいろと興味深い。70年代の航空写真と現在のそれを見比べると、中国山地や新潟の山間部では、うろこ状に広がっていた棚田が、圃場整備で四角形になったり、一枚の面積が広がったりしている。津々浦々まで、圃場整備が行なわれたのだなと。また、谷の奥な尾根筋など条件が悪そうなところ、集落から遠い場所にある棚田が森に帰っている状況も。日本の山間経済のあり方が変化したことを如実に示している。「酷道」扱いされる400番台の国道は、山地を通っていることが多いから、逆に山間の土地を堪能できる。
国道一号線と鈴鹿峠がずいぶん南にあるのも驚いた。関ヶ原を通ったほうがゆるやかだけど、東海道のルートだと、数日北に迂回することになるだけに、そっちのルートを選べなかったのだろう。鈴鹿山地の中では、いちばん標高が低いのが鈴鹿峠ということなのだな。鈴鹿峠の南西、高畑山の南麓にも峠があって、こっちの方が楽そうじゃねと思ったが、標高が100メートル違うのか。しかも、ネットで調べてみると、崩落が激しい道のようで、これだとわき道にもなっていない理由がよく分かる。下の二つのページ見ただけで、崩落ぶりがよく分かる。雨が降ったら危険だし、これ、馬でも厳しくないか…
神大滝林道 坂下峠
坂下峠 神大滝林道 三重県側 VOL・3 - 山神のブログ 3 - Yahoo!ブログ
352号と401号で、登場する尾瀬も興味深い。尾瀬の東側を抜ける沼田街道という街道が存在し、かつてはそれなりに交通があったというのが興味深い。そういう人が通るルート上にあったからこそ、美しさが外に知られ、保護されるようになったのだろうな。こういう交通史については、詳しい情報が欲しいな。国道401号は、沼田街道をトレースする予定だったが、尾瀬の国立公園化で、永久に未完成なのが確定したと。
視点 オピニオン21
尾瀬の歴史 尾瀬について雑多徒然
尾瀬紀行(9)尾瀬 「点線国道」 ( 登山 ) - 気ままな山旅の記 - Yahoo!ブログ
古い道が多いせいか、良い感じの町並みが残る集落が、国道のすぐ脇というか、旧道だったりするのも良い。
以下、気になったものチェック。
418号線
長野県阿南町から西に岐阜県境の山地を突破。岩村あたりから北に針路を取り、木曽川で西に。笠置ダム湖沿岸は廃道化しているが、これはバイパスが整備されつつある。木曽川沿いに中部平野に出て、北端を通過。長良川支流の武儀川から山地に進入。本巣市内で、国道157号と合流。有名酷道の能郷・温見峠を通過、大野市が終点。
- 達原トンネルでバイパスされた旧道が消滅している
岐阜県恵那市の達原トンネル。旧道が地形図では見えなくなっていて、トンネル建設によって廃道化したんだなとおもっていたのだが、そんな甘っちょろいものではなかった。因果が逆で、災害で国道が大崩落。災害復旧としてトンネルの建設を余儀なくされたという。国道418号 達原トンネル廃道 その1 HETIMA DIARYのレポを読むと、破壊の凄まじさに愕然とする。
- 岩村城下町
日本三大山城に数えられる岩村城とその城下町。地図を見た時点で、城下町の姿を色濃く残していそうなのがわかる都市。概ね大給松平家が支配した。重要伝統的建造物群保存地区指定。
城下町ホットいわむら
岩村:集落町並みWalker オススメ度高いな。
岩村の古い町並み:一路一会
重伝建・岐阜県岩村町 穴場発見、女城主のおひざ元の知られざる魅力 coinaca
- 八百津町中心部
木曽川が平野に出るところに発展した町場。丸山ダム湖の畔に立地。小さな町に酒蔵が三つも四つも生き残って、立派な建物を残しているのがすごい。
八百津:集落町並みWalker
八百津の古い町並み:一路一会
八百津めぐり(4)・・古い町並み ( 旅行 ) - houzanの気ままな人生2 - Yahoo!ブログ
425号線
和歌山県御坊市から三重県尾鷲市へと、二つの港湾を結んで紀伊半島を横断する道路。代表的な酷道だそうで。ひどいひどいといわれながらも、着実に整備が進められている模様。印南町の高串トンネル付近までは、二車線道路が整備されている。切目川の東西方向に発達した谷は地図を拡大すると印象的。南北に峠がぞろぞろと。これは、地質構造が影響しているのだろうか。
439号線
徳島県を出発し、一つ南の谷を西に向かって移動。四国山地を半ば横断。仁淀川町で南に転じ、四万十川流域に入る。四万十川河口近くの中村が終点。「ヨサク」として有名なのだそうで。
地図で追っていて印象的なのが、とかく、谷が東西方向に連続していること。町並みとかぶっ飛ぶ、地形のすごさ。まあ、あまり大きな集落はないんだけど。峠で仕切られつつ、東北東から西北西に並ぶ。仕出川、園瀬川、鮎喰川、穴吹川、太合谷、祖谷川、南小川、吉野川、上八川川、仁淀川、大洲市、八幡浜市と、ひとつらなりに見えるのがすごい。中央構造線に沿った地質構造が影響しているらしい。で、地すべり地形に棚田が発達。
土佐の嶺北、美しすぎる棚田たち? 序説 ウエブマガジン四国大陸
69 剣山:断層の谷
つるぎ町一宇地域の地質・岩石・地すべり地形
- 剣山と剣山本宮神社
439号の難所、見ノ越を擁する山。修験道の山だったそうで、奇岩と神社が存在。
剣山 - Wikipedia
剣山頂上の「剣山本宮宝蔵石神社」に参拝 - 昔に出会う旅 - Gooブログ
地形図を眺めていると、剣山の北の丸笹山の北には、すごくえぐれた地形があって驚く。山体崩壊なんかがあったわけではないようだが。この近辺の吉野川南岸には、おなじようなえぐれた地形がいくつか。
つるぎ町一宇地域の地質・岩石・地すべり地形 - 徳島県立図書館
- 高知屋旅館
高知県長岡郡本山町本山の旅館。ストリートビューで見ると、良い感じに歴史を経た建物が印象的。
Vol.119 思い出をくれる宿|あしすと
国内最大規模の石灰石鉱山。年間1400万トンほどを露天掘りで採掘。山が200メートルほど低くなったとか。鉱山もすごいけど、20キロ、延々、地下を走る鉱石用ベルトコンベアが須崎港に続いていて、そこから積み出されているってのがなんとも。衛星画像で見ても、白さが目立つ。
天空の鉱山「鳥形山 」を訪ねる - 地質調査総合センター
鳥形山
530 角谷岬=須崎市下分乙(高知県)日本最大規模の石灰石鉱業所がある岬:でんでんむしの岬めぐり:So-netブログ
鳥形山 - パパ日記 -part3-
砂嘴が発達して、かつては潟湖があったんじゃなかろうかという四万十川河口。そして、河口近く、二つの川に挟まれて整然と四角の町並みが見える中村。ただ、ストリートビューでみても、それほど古い建物が残っている様子でもないな。中村から宿毛に平地が続いているが、これは宿毛−中村断層帯という断層らしい。
25号線(非名阪)
比較的上位のナンバーの割りに整備状態が悪いということと、ほとんど高速道路の名阪国道とのコントラストが大きいということなんだろうけど。まあ、名阪国道が整備されてしまえば、下道は適当で言いやってなるよなあ。集落を結んで走っているというのは、良い道だと思うのだがな。ラストは、加太越奈良道という、江戸時代の古道を通るようだ。伊賀盆地から峠に入る直前の宿場である柘植は良い感じの町並みらしい。
奈良県側に盲腸のように突き出ている不思議な集落。一応、30メートルほどの回廊でつながっているが、道路は奈良側を通らなければならない、事実上の飛び地。単なる飛び地なだけではなく、「名張ぶどう酒事件」の現場がここなのだそうで。
特集:1枚の地図から(2008.9.14)
- 柘植宿の町並み
なにやら、国道に並行して、宿場町のような集落が続いているので、調べてみたら割りと有名な町並みだった。宿場町そのものとしての建物はあまり残っていないようだが、落ち着いた町並み。
伊賀市柘植町の町並み
柘植宿の古い町並み:一路一会
308号線(暗峠)
旧道がそのまま残っているのが、趣深い。奈良と大阪を最短距離で結ぶルートで往時はにぎわったんじゃなかろうか。傾斜はきつそうだけど。生駒市のあたりって、西に生駒山があって、谷があって、そのあとまた山があるんだな。生駒市の市街地を抜けると、再び山道。その後は平地に。
421号線石榑峠
トンネルが整備されて、酷道から外れている。旧道区間は廃道化が着実に進んでいるようだ。三重側は通行止めで完全に廃道扱い。まだ、自転車なら踏破可能のようだが。
国道421号石榑峠旧道2015前編
458号線
山形県の上山市と新庄市を、十部一峠で結ぶ。かつて、永松・大蔵の二鉱山が存在したため、その運び出しルートとして指定されたのかな。そうでなければ、こんな山の中無理して通さんでもって感じ出し。
- 永松鉱山跡
近世初頭からの金山・銅山だったそうだ。1970年ごろに廃坑になったようで。
永松鉱山探訪 - IC‐net
- 大蔵鉱山跡
肘折カルデラ内に存在した銅山。1960年に廃坑。いや、火山のカルデラががっつり残っていて、その中に温泉や農地があるのがすごいな。
柵の向こう側 大蔵鉱山
肘折カルデラ - Wikipedia