『ニッポンの洞窟』

ニッポンの洞窟 (イカロス・ムック)

ニッポンの洞窟 (イカロス・ムック)

 こうしてみると、洞窟言うても、いろいろあるんだな。鍾乳洞のイメージしかなかったが、海蝕洞や溶岩洞、人が掘ったもの、鉱山跡などなど。東京、神奈川、埼玉と、宗教色の強い洞窟が多数存在するのは、この地域に巌窟信仰の伝統が強いってことなのかね。『日本史の森をゆく』で言及されていたことだが。
  大阪は交野市の磐船神社や獅子窟の巨石の間を抜けていく修行場も印象的。巨大な転石が、ごろごろ転がる地形って、どうやって形成されたのだろうな。
 意外とたくさんある海蝕洞。富士山周辺に多数存在する、溶岩流の表面が冷却固化したあと、内部の流動性の高い溶岩が抜けて形成された溶岩洞。信仰の場や生産の場としても、人間に利用されてきた歴史が趣き深い。個人的には洞窟の主力といった印象の鍾乳洞が意外と少ないのはどういう編集意図なんだろう。あと、鍾乳洞では、山口の秋芳洞が代表格だと思うのだが、本書では触れられていないんだな。
 人工的に掘られた洞窟も興味深い。廃坑になったあと、観光用坑道として蘇った鉱山たち。大谷石の採掘場跡。洞窟の中の温泉。いろいろと、洞窟の人の関わりがあるのだな。


 検索していて、こんな記事見つけた。
浅川研究室が『聖なる巌−窟の建築化をめぐる比較研究−』を刊行 公立鳥取環境大学