書評と図書館・本屋関係メモ

[本]「英雄はいかに作られてきたか フランスの歴史から見る」アラン・コルバン 著 | Kousyoublog

 19世紀に創造されたフランスの「英雄」たち。それらが、時期ごとに、どのような理由で「英雄」とされ、場合によっては忘れ去られていったか。
 英雄的軍人が近代戦の悲惨さによって消えていく、聖者は脱宗教で後退するがロマン主義者に再発見される、啓蒙主義的偉人、ロマン主義的英雄などの類型に分けられる。かれらを検証することによって、国家の安定を図ろうとしたか。
 シャルルマーニュカール大帝)の「フランス史」への組み込みなんかは、ナショナリズム的史観の滑稽さを示しているよなあ。いま、東アジアで「高句麗は中国か朝鮮か」を争うように、そういう滑稽な争いが再現されているわけだが。
 あと、ジャンヌダルクの多義性。今は排外主義のアイコンになっているって…

[本]二松啓紀『移民たちの「満州」』(平凡社新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

 なんというか、完全な棄民政策だよなあ。満州で面の支配を確立するべく屯田兵的に植民を行い、それによって農村の貧困も解消しよう。国内の矛盾の海外輸出。そもそも、国内の農村の疲弊も、植民地からの米や工芸作物の輸入による競合が原因だし。かつ、移民先の満州での農業経営の成算が存在しなかったあたりが、もう。
 これの障壁になったのが高橋是清だったが、226事件で暗殺されて、プロジェクトが進んでしまう。
 入植先も、無住地ではなく、もともと現地の住民が利用していた土地を奪ったもので、かつ、実際の農作業は現地人任せだったと。で、失業者のはけ口にされたりと。
 ラストは大戦末のソ連の侵攻の帰結。ソ連軍と土地を奪われた現地人の間に取り残され、苦難にあう移民たち。完全に捨石だな。「国策の犠牲者」にして、現地住民の土地を奪い、植民地支配の一翼を担った「加害者」の側面もあると。
 いや、本当に構想して、推進した連中の罪深さがな。「東京帝国大学教授の那須皓(しろし)と京都帝国大学教授の橋本傳左衛門」ね。

[本]【読書感想】そして、メディアは日本を戦争に導いた - 琥珀色の戯言

 まあ、勇ましいことを書く方が売れたのなら、そっちのほうに行くよなあ。現在の日本で、そっち系統を露骨に出してくる新聞が産経で、そっちよりが読売と、一色になっていないあたり、まだ、現在の日本社会は理性を保っているのかな。まあ、新聞そのものが死んでるメディアだけど。
 勇ましい記事が受けるから、そっちに流れる一方で、政府からの圧力で自主性が発揮できなくなっていく。あるいは、部数にも表れる、世論からの圧力。これらが絡み合った、複雑なプロセスなんじゃなかろうか。
 あと、昭和初年の日本社会に関して、「貧困は一段落」といっても、金の回りが偏っていたのは確かなんじゃないかね。

[本]なぜ私たちには中国が「脅威」にみえるのか / 『日本と中国、「脱近代」の誘惑』著者、梶谷懐氏インタビュー | SYNODOS -シノドス-

 キーワードとしての「脱近代」。
 「近代」が外部から来たため、うまく行かなくなると、「本来の姿に戻ろう」という考えがでてくると。日本でも、江戸時代に戻ろうみたいな意見はよく聞くしな。つーか、中国では「リベラル知識人」が右翼なのか…
 しかし、異質な政体が台頭してきたから、日本もそれに近づいてしまうってのは、なんか本末転倒なんじゃねとしか。
 近代国家とそうでない顔を使い分ける中国がわかりにくいとか、「民間」の連携が希望とか。

[本]「宗教至上主義」を超えて――日本の中東理解のあり方を問う / 『「アラブの心臓」に何が起きているのか 現代中東の実像』編者、青山弘之氏インタビュー | SYNODOS -シノドス-

 宗派対立など、過度な単純化が行なわれていると。実際には、普通の政争の旗印に宗教が使われているに過ぎなく、それを宗派対立でマスクしてしまうのはよろしくないと。こういう構図が、実際に政策や介入の背景になってしまっている問題。
 最近、中東地域が危険になって、研究者が現地に滞在して研究できない状況か。イラクで、安全地帯に篭っていても、あんまり研究には意味ないだろうしな。
 ムスリム同胞団や軍の位置づけ、「制度内政治」と「制度外政治」、「政治的安定」と「政治参加」の両立の難しさ。パレスチナレバノンが「決めない政治」に舵を切って、逆に安定しているというパラドクス。ヨルダンの外的に規定された安定。エジプトは体制構築の「主体性」があるから、希望がある。

また多数派と少数派という区別をするなら、西側諸国のもう一つスタンダードである、少数派保護の原則に従って、ヌスラ戦線やイスラーム国といったアル=カーイダ系組織の攻撃の対象となっているマイノリティ宗派、シリアの場合はアラウィー派シーア派の境遇に目を向けてもいい訳ですが、そのような考え方はどこかに行ってしまっているんですね。ちなみに、イラクでは、西側諸国は、シーア派が多数を占めるマーリキー前政権を「シーア派独裁」と批判する一方で、クルド人キリスト教徒、ヤズィード教徒といった少数派保護の姿勢を打ち出すといった具合に、ダブルスタンダードで対立を煽っているとしか思えない、というのが実情です。

 うーん、ここはどうだろう。

[本]『統計はウソをつく アフリカ開発統計に隠された真実と現実』 こうして数字はつくられる - HONZ

 アフリカ諸国の統計があまりに貧弱で、不正確であること。にもかかわらず、それを元に政策が策定されている。本書は、その「数字」がどのようにひねり出されているか、その現場を追ったもの。
 統計というのは、税金を捕捉するための国家の基本的な能力だが、資金不足から、その部分で躓いている状況と。本当に構造的問題だな…

[本]よくわかる第一次外惑星動乱(谷甲州『コロンビア・ゼロ』発売記念) - ka-ka_xyzの日記

 おー、続きがでてるのか。でも、文庫じゃないんだよね。困ったな。
 個人的には「巡洋艦サラマンダー」のエピソードが好きだな。あれって、ラプラタ沖海戦がモデルなのかね。
 久しぶりに読みたくなったが、時間がな。あと、置いてある場所が微妙に取り出しにくい。『終わりなき索敵』は持ってないんだったっけか。

[本]「フリーライブラリアン」のすすめ ≪ マガジン航[k??]

 ネットで検索できるようになる前は、本探すの大変だったんだよな。冊子体の雑誌所蔵リストで探したり。しかし、Nacsis-Webcatを知らなかった院生のエピソードが泣ける。
 そういえば、件名って使いにくいんだよな。件名を最初に使った検索ってやらないな。最近のOPACでは、関連項目に件名があるから、ある本から芋づるはよくやるけど。
 私も割りとヘビーユーザーだけど、図書館員に相談したりするようなことは避け勝ちだな。めんどくさいし。

[本]本屋の書籍ジャンル担当者は、何をしているのか〜理工書を例にした書店員の業務内容〜 - 積読書店員のつくりかた

 棚から、何を外して、何を入れるかが難しいと。私なんかがやったら、外すのが遅れまくりそうだな…
 後半は後で読む。