佐野貴司『地球を突き動かす超巨大火山:新しい「地球学」入門』

 大陸上の洪水玄武岩や太平洋などの海底に存在する巨大海台など、「巨大火成区」(略称LIP)と呼ばれる巨大な火山活動の痕跡についての本。
 前半は、著者が実際に調査を行なったことがある、シャッキー海台、デカン・トラップ、オントンジャワ海台の解説。ボーリング調査の結果から、白亜紀に噴火した巨大海台は、噴火しているときには海面上に姿をあらわしていたという。それが、噴火活動が収まったあと、自身の重みで沈降していったという。想像を絶する規模の話だな。デカン高原の溶岩流の層序を明らかにするのに、溶岩の成分の変化が利用されるようになった話。しかし、全域の地質調査が進んでいない状況。オントンジャワ海台からのピクライト質玄武岩の発見の話など。
 第三章は、中央海嶺や沈み込み帯、ホットスポットにおけるマグマ生産のメカニズム。水の存在が影響したり、マントル物質が急激に持ち上げられて圧力が下がって溶解する。ホットスポットのマグマ形成については、まだ定説がないようだ。
 残りの四-六章は、LIPを形成するような超巨大噴火がどのような意味を持ったかという話。大陸洪水玄武岩の噴出と大陸の分裂の時期が一致する。あるいは、分裂を開始した地点にはホットスポットがあり、海山列が残っているといった話。大陸を分裂させ、巨大な火山活動を引き起こすメカニズムとして、プルームモデルを紹介する。本書を読んでも、今のところ、プルームモデルを裏付ける証拠は出ていないようだけど。南太平洋のプレートのダイナミックな変動もすごいな。そして、このような巨大な火山活動が生物の絶滅の原因じゃないかという指摘。玄武岩の溶融実験など、研究の手法も興味深い。
 巨大海台は、最終的には沈み込み帯で、マントルに飲み込まれていくが、その際、上部は大陸地殻に付加体として、削り取られれて残る。日本でも、中央構造線の南のみかぶ帯は巨大海山の名残なのだそうだ。日本列島に匹敵する長さというのがすごいな…

 このように、中央海嶺は地球表面を容易に移動します。そして海溝に飲み込まれてしまうことすらあります。この事実は、中央海嶺マントル全体が関与する巨大対流の湧き出し口ではないことを物語っています。もし中央海嶺マントル対流の湧き出し口だとしたら、中央海嶺が海溝から沈み込んで消えてしまうことは考えられません。マントル全体が関与する対流の湧き出し口が、沈み込み口に対して容易に移動したり飲み込まれたりするとは思えないからです。中央海嶺はプレートの単なる割れ目であり、マントル全体が関与する対流の湧き出しとは直接の関係はなさそうです。南太平洋のプルームがマントル対流の地表への湧き出し口にふさわしいようです。p.180

 え、そうなんだ…
 プレートが生まれる場所ではあるんだろうけど。よく分からない話になるなあ。