湯浅浩史『ヒョウタン文化誌:人類とともに一万年』

 アフリカ原産で、非常に古い時代から各種の容器や楽器、装身具として使われてきたヒョウタンについて、いろいろな観点から紹介する本。古くから人類の供であったので、人類の移動の復元に有用であること。土器が、ヒョウタンをモデルにしているのではないかという話。形態はさまざまな形に選抜されるが、種はそういう品種改良が及びにくいので、系統を調べるには種の形を見るといいとか。自分で作ってみたいが、調べてみると、ヒョウタンの果肉を除去するのに、水につける必要があって、その際、かなりの悪臭があるのだとか。興味本位で手を出すには、ちょっちきびしい。マメヒョウタンをリュックにぶら下げてみたいが。


 最初はイースター島、パプア・ニューギニア、フィリピンのヒョウタン風俗から。パプアのペニスシースがすごいな。
 第二章が植物としてのヒョウタンの解説、
 第三章がヒョウタンの伝播。野生種が多いのはアフリカで、やはりアフリカで栽培化されてであろうこと。しかし、明確にここで栽培化されたという定説はまだない模様。あとは、出土したヒョウタンの話で、アメリカにどうわたったか、あるいは、縄文時代ヒョウタンなど。ヒョウタンを火にかけ煮炊きに利用することも可能であるから、土器の原型になったのではないかという話。
 第四章から第六章は、世界各地のさまざまなヒョウタンの利用法。水などの液体の容器から始まって、さまざまな身の回り品の容器に利用される。お酒、油、香辛料、茶、タバコなどなど。食器に使われ、装身具にもなり、種まきに使われたり、漁の浮きに使われたり、苦味のないユウガオなどは食糧になったり。あるいは、笛から、弦楽器、打楽器にわたる、世界各地の楽器としての利用。そして、ヒョウタンにさまざまな加工を施す。色を塗ったり、彫刻したり、絵を描いたり。本当に多様な使い方があって、人類の伴侶であったのだなと。今や、プラスチック製品に押されて、日用品としてのヒョウタン文化は風前の灯のようだが。
 最後の章は、シンボルとしてのヒョウタン。こちらも多様。世界開闢の神話にヒョウタンを絡ませている民族が多数あったり、水のシンボルだったり、主婦のシンボルだったり。儀礼でも、さまざまに利用される。それだけ、人類と深くかかわってきた存在であると。
 ヒョウタンについて、興味をかきたてられる。