七宝町七宝焼アートヴィレッジ編『七宝資料集3:七宝窯元 伊藤常三郎家資料』2010

 幕末から大正にかけて、地域でも有力な窯元であった伊藤常三郎家の史料。明治44年から大正5年にかけての帳簿類がメインで、ほかにパリ万博の売上のうちの未払い金を窯元ごとにまとめたものや愛知七宝商工同業組合の名簿など。どれも、この地域の七宝焼きの歴史を調べる上で、役に立ちそうな史料。フィールド・ワーク込みじゃないと、論文にはならなそうだけど。
 帳簿に関しては、ザッとみただけだが、納入から支払いまで、それなりの時間がたっているのが多い。最短だと4ヶ月だが、長いと数年レベル。回転の遅い贅沢品だけに、逆に遠島のような複合生業の製造業者のほうが生き残りやすかったのかもしれないな。七宝とは別に、農業からも収入を得ることができる。返品もあるようだし。