明治時代、帝室技芸員に選出された名工、東京の濤川惣助と京都の並河靖之にフォーカスした企画展の図録。京都の並河靖之が細かい植線と黒色透明釉薬を特徴とするのに対し、東京の濤川惣助が区画を区切る金属線を外した「無線七宝」を特色とすると、作風も対照的。
並河作品では、9番の藤図花瓶がいいな。濤川作品では21番の菊紋蛍図花瓶が良い。蛍の光を、釉薬のにじみで表現しているのがこころにくい。
どちらも、尾張の七宝焼に技術的源流をもつこと。特に、濤川惣助の工房では、塚本貝助の縁者がメインで製作したという。