海に漂流する微小なプラスチックごみについて環境省が今夏、全国調査に乗り出す。有害物質を吸着するなどして生態系に影響を与える恐れがあるが、生成過程や漂流経路は不明。東京海洋大に委託し、航海演習のため日本一周する練習船で採取してもらう。
海に流れ出たプラスチックごみは、波や温度差、紫外線で砕けて細かくなる。大きさ5ミリ以下のものはマイクロプラスチックと呼ばれ、ここ数年、世界的に論文が発表され「海がプラスチックのスープになっている」などと問題になっている。
もともと有害物質が含まれている場合があるうえ、細かくなって表面積が増えるとポリ塩化ビフェニール(PCB)などの有害物質を吸着しやすくなる。濃度は周りの海水の10万〜100万倍になることもある。魚などがプランクトンと間違えて取り込めば生態系に影響するほか、食物連鎖で濃縮される可能性もある。
調査に使うのは、東京海洋大の練習船。東海正教授(生物資源学)によると、今年7〜8月に日本一周する「海鷹丸」と「神鷹丸」で漁業演習をする学生約80人が協力する。海面のごみを目視で確認し、プランクトン用の網をひいて微小なプラスチックを採取する。
データ分析を担当する九州大の磯部篤彦教授(海洋生物学)が松山市沖の瀬戸内海で調査したところ、プランクトン100個に対し、1個の割合でプラスチックが含まれていた。「広がると回収しようがなく、どういう影響が出るのか予測がつかない。分布状況を明らかにしたい」と話す。
(香取啓介)
この問題に関しては、チャールズ・モア、カッサンドラ・フィリップス『プラスチックスープの海:北太平洋巨大ごみベルトは警告する』が詳しい。実際、生態系に入り込んだプラスチック片が、どの程度の悪影響を及ぼすかは、早急に調べるべきこと。あと、放出したごみをどう回収するか。