ポール・G・フォーコウスキー『微生物が地球をつくった:生命40億年の主人公』

微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公-

微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公-

 うーん、なんかわかった気がしねえ。イオンとか、あのあたり、苦手やねん。
 膜をつくって、電荷の差を作り出し、それによってエネルギーを得るナノマシンが微生物であること。これらが、地球全体に広がり、電子のやり取りを行って、環境を維持している。これを可能にする重要器官に関しては、遺伝的多様性が少なく、コアとして守られている。また、このような遺伝子は水平伝播が行われていること。
 地球の大気が酸素で満たされるには、生物の遺体が沈殿、地質活動によって岩石から取り去られることが必要であった。地上に生物が進出し、大型の植物が出現すると、その過程は促進され、酸素濃度が一層高くなるフィードバックがあったという。そういうのは、考えたこともなかったな。
 大型の多細胞生物は、微生物の大群によって形成・維持されているシステムのお客さんで、はるかに変化に弱い。そもそも、微生物も含む系統樹の端っこに過ぎないというのも、新鮮な見かた。


 最後の三章は、人間が生態に与える影響から、遺伝子操作による介入の可能性、さらには宇宙へ。
 無邪気に、何十億年かけて微生物が改変してきた環境を改変している人類のやばさ。爆弾の上でダンスをしているような危険さがアレだな。長年かけて、地中に貯留されてきた炭素=化石燃料を燃やしまくって、環境に戻す人類。大気中から人工的に窒素を固定して、ばら撒きまくる人類。自らが依存している地球環境を、自らビシバシ改変していく恐ろしさ。特に、窒素固定ってのは、微生物にはできない芸当で、富栄養化が進むと。
 微生物の遺伝に関する研究の歴史。そして、遺伝子操作への動き。しかしまあ、水平伝播の可能性と、それが環境中に放出されたらどんな反応が起きるかわからないことを考えると、微生物の遺伝子操作は怖いな。
 最後は、地球外生命体の話。


 微生物研究の歴史と地球環境の管理者としての微生物の話がオーバーラップする、なかなかおもしろい本。敷居は低くないけど。


 以下、メモ:

 光合成する微生物は太陽光のエネルギーを用いて新しい細胞を作る。世界中の海に、光合成をする微生物、つまり植物プランクトンがいて、酸素を生み出している。そうした生物はもっと高度な植物の先駆けだが、地球の歴史ではずっと以前に進化した。何日かして、私たちの研究グループが何年か前から開発していた、植物プランクトンを検知するための装置、特殊な蛍光光度計が、誰もそれまで見たことがなかったような奇妙な信号を記録した。信号は水中の相当深いところにあった。ちょうど酸素がなくなり、光の強度が非常に低くなることろだった。作業を進めると、その変わった蛍光信号に関与する生物が、厚さがわずか一メートルほどの薄い層を占めていることに気づいた。それは光合成する微生物だったが、もっと上の方にいる植物プランクトンとは違って、酸素を作ることはできなかった。この微生物は、植物プランクトンよりもずっと前に進化した古い生物の仲間の代表で、地球に酸素ができる前にいた生物の生きた名残だった。p.17-8

 黒海の水深150メートルほどに存在する、非酸素光合成微生物の話。黒海の話は、その後も、度々出てくる。