食足りて、○○を知る?――鯨油とパーム油の見えざる関係 / 赤嶺淳 / 海域世界論・食生活誌学 | SYNODOS -シノドス-

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 もともと、日本も含めて捕鯨は鯨油生産が主目的だった。灯油としての利用が石油の出現によって衰退しても、「硬化油処理法」の開発によって、工業的利用が行われた。石鹸製造の副産物としてのグリセリンは戦略物資に。また、食用油としてマーガリンの生産が行われる。
 1970年代まで、マーガリン原料の鯨油の確保が主要目的だった。
 それが、冷蔵庫の普及や精製技術の発展にともなって、原料が植物油に転換していく。さらに、漁獲枠の削減で、鯨油の生産効率が下がって、鯨肉の生産への比重が移っていくと。


 食用を正面に出したのは、実は第二次世界大戦直前から。戦時体制で蛋白源としてにわかに注目されるようになったが、鯨油の生産が主目的だった母船に食肉生産用の設備がなく、持ち帰るのは困難だったと。
 さらに、経営のメインが鯨肉になるのは、1976年から。「伝統食」としての、鯨肉という議論の前提が消滅する話だな。
 とはいえ、「母船式捕鯨」という技術をロストテクノロジーにしてしまうのも、それはそれで問題だと思うが。


 生物起源の油脂資源として、鯨油とパーム油は接続される。そして、捕鯨熱帯雨林破壊がつながると。植物性油脂も、捕鯨と同程度に環境破壊を行う存在であると。パーム油も、捕鯨問題と同程度にやり玉に挙げられろということか。
 しかしまあ、再生産能力を考えると、鯨油で、植物性油脂を代替するのは現実的じゃないよなあ。今から鯨油生産を再開しても、とても補いになる量は確保できないだろう。まだ、イワシなんかの魚油の方が現実的というか。