講演会「熊本城のこれから」

 熊本市現代美術館の「ジブリの立体建造物」展にともなって開催された講演会。「熊本の建物のこれから」のシリーズ講演の一回目。建築に関する講演が隔週ごとにある模様。熊本城の現状を紹介する講演は、あちこちで行われているが、天候やタイミングで、今まで、なぜか聞く機会がなかったんだよなあ。


 タイトルの通り、熊本城のお話。熊本城の被害状況とこれからについての話。
 写真で熊本城内の被害状況が紹介されたが、なかなかすごい状況。最初に紹介された被害の表がおもしろい。石垣がどこもかしこも崩れているように見えるが、表面積で算出すると、崩落が1割程度になるのだとか。あとは、地盤の被害もかなり深刻なのだとか。山を造成しているからには、やはり、盛り土とかもかなりあるのだろうな。
 天守閣の瓦は、落ちたのは最上段だけ。下段は巻き込まれて破損したものとのこと。東日本のマスコミが、城のシンボルとして「鯱」を重視していたって話は興味深いな。確かにシャチが落ちて、ちょっと寂しい姿になっているが、熊本城ではそれほど重要視はされていないよなあ。天守閣そのものとか、武者返しの石垣の方が重視されているところはあると思う。階段が破損しているが、後付のもので、天守閣の構造そのものとは関係ない。ただ、多人数が上るのは無理と。内部の石垣の修理も、外側の重要文化財との兼ね合いが難しいそうだ。
 宇土櫓は、鉄骨の補強もあって無事だったが、大きな地震がきたら無事な保証はないと。鉄骨と接続した柱が裂けているので、解体修理の必要があると。石垣も、部分的にはらみだしていて、重要文化財を乗せる基礎として、適切とはいえない状態になっていて、ここをいじるなら、どちらにしろ、解体修理は不可避と。


 しかしまあ、今回、熊本城で一人も死者が出なかったのは、飛び切りの奇跡なんだな。そもそも、夜間に起きたのが運が良かった。昼間だったら、観光客が多数歩いている場所に、足の踏み場もないほど石垣が崩れ落ちている。で、実際に昼間にこの地震が起きた場合、行方不明者の捜索を行わなければならず、そのために無事な石垣や建物を破壊して重機を導入する必要があり、文化財としての価値が致命的に毀損されていた可能性もあると。あと、夜間も警備の人が常駐しているし、押しつぶされた熊本大神宮の社務所も人がいない部屋ばかりだったと、薄皮一枚であった。
 このような奇跡は「次回」は期待できない。そのため、「利用」のための公開をどこまで行うかが、今後の課題となるという。確かに、「文化財」としての保全を危険にさらすのは問題。一方で、熊本城は、石垣が売り物だし、そのあたりは悩ましい。
 5月10日の馬具櫓の石垣崩壊は、外見からはそれほど危険性を感じない状況で、突然起こった。外観で安全性を知るのは難しい。そもそも、石垣の安全度を調べる方法もない。かなり、地雷的な状況。観光地として、公開していくには、ハードル高そうだなあ。


 あとは、地震直後から現在までの、地震対応の話とか。
 避難所の対応に投入されて、当日翌日はむちゃくちゃ忙しかった話。応急対応。マスコミ対応が非常に大変だった話。深夜にも電話がかかってくるとか。5/11の公開以後は、スクープ狙いが激減したそうだ。あと、視察や講演は、なるべく受けるようにしている。毎日のように視察が来ているとか。