佐藤比呂志『巨大地震はなぜ連鎖するのか:活断層と日本列島』

巨大地震はなぜ連鎖するのか 活断層と日本列島 (NHK出版新書)

巨大地震はなぜ連鎖するのか 活断層と日本列島 (NHK出版新書)

 プレート境界型の地震と内陸の断層型地震を関連付けて議論している。こういう議論は始めて見たような気がする。
 東日本大震災でわかったことだが、長期間プレートで圧縮されて、ひずみがたまると、内陸の断層も活発化する。日本列島は、東アジアから離れて、日本海が形成される過程で、多数の断層が形成。この古傷が、現在の地震につながる。
 内陸活断層は、自立的に、定期的な地震を起こしているわけではなく、プレートの動きやそれに伴うひずみの蓄積に支配されていると。


 東北では、1000年かけて蓄積された圧縮のひずみで、宮城県周辺で地震が頻発していた。このひずみが解消されて、当面レベルでは内陸地震は沈静化する可能性が高いと。もっとも、ひずみ解消で伸びて、正断層の地震は起きそうだな。昨日の地震なんか、まさにその通りの正断層地震だし。
 宮城県沖では30年ごとにM7クラスの地震が起きていたが、こちらはどう影響をうけるのだろうか。


 西日本では、南海トラフのひずみ蓄積によって、50年単位で静穏期と活発期を繰り返すと。ここ400年くらいのパターンだと、2040年ごろ南海トラフ地震が発生することになるが。昭和の南海・東南海地震の規模が小さめだったとすると、もっと早くなるかもしれない。この辺り、高精度に予測するのは難しいだろうな。あと、東日本大震災のような長期間のひずみの蓄積があるのかどうか。
 四国の北西部あたりに、プレートの固着域があって、九州南部は東に引きずられている。その力が、熊本地震を初めとした一連の地震を引き起こした。
 日奈久断層帯の高野-白旗区間が一日目に地震を引き起こす。その翌日に、布田川断層帯の布田川区間と日奈久断層帯の高野・白旗区間が連動した。地震の動向がこう整理されている。ということは、布田川断層帯宇土区間宇土半島北部区間、日奈久断層帯の南側は相変わらず危険ということか。ここのところ、宇土やら、熊本市西部で地震が多いし、ちょっとどころではなく不安になるな。


 阪神大震災以降、地震の観測体制が拡充され、反射法地震探査が広い範囲で行なわれたり、GPS観測点や地震計が多数設置されるようになる。さらに、東日本大震災後は、海底の観測点の設置が強化されている。地震の被害とともに、知識が蓄えられていく姿が印象的。
 あと、プレートって、割と短期間で出現したり、動く方向を変えたりするんだな。


 以下、メモ:

 また、活断層は、最近活動していないものほど動きやすい。布田川断層帯の過去の最新活動時期は、宇土区間宇土半島北岸区間は資料がなく不明だが、布田川区間は約2万6000年前〜約8100年前と推定されていた。
 日奈久断層帯の高野‐白旗区間の最新活動時期は約1600年前以後〜約1200年前以前とされているから、布田川区間はこれよりもかなり古く、最後に動いたときから長い時間が経過しており、動きやすい状況になっていた可能性がある。p.30

 うーむ、高野‐白旗区間の前回の動きが、1600-1200年前って、割と最近の話だな。1200年前ってのは、貞観の肥後であった地震のことなのかね。

 活断層の活動性については、平均変位速度で記述される。平均変位速度とは、河岸段丘面や火山灰層などをマーカー(目印)に、数万年間や数千年間で何ミリメートルのずれが生じたかを測るものだ、この値が年間1ミリメートル以上のものをA級、0.1ミリメートル以上1ミリメートル未満のものをB級、それ以下をC級と区分している。この値と、平均的な活動感覚には相関があり、A級は千〜3千年程度、B級は5千年から1万年程度、C級は数万年となる。p.88

 へえ。とはいえ、一度内陸活断層地震が動けば、その地域は当面安泰と言うことになるのかな…

 日本海のように、大陸の縁辺に見られる、陸や浅海部によって大洋から分離された海を「縁海」と呼ぶ。ユーラシア大陸の東端の西太平洋に臨む部分には、日本海に限らず、オホーツク海沖縄トラフ南シナ海といった縁海が並んでいる。伊豆・小笠原諸島の西側の四国海盆とよばれる海盆も、背弧拡大によって形成された海盆であり、西太平洋地域には、多数の背弧海盆が形成されている。ちなみに、太平洋の反対側、すなわち東太平洋を見ると、縁海は見られないから、この動きは、太平洋プレートの西側だけで起きた。特徴的なものらしい。p.107

 そういえば、他の地域ではそれらしいのはないなあ。カリブ海は成因が違うのかな。

 後に2011年の東北地方太平洋沖地震を起こすことになる地殻変動の影響で、宮城県内のほとんどの活断層が過去100年強の間にずれ動いていた。幸運にも、長町-利府断層は割れ残った。モーメントマグニチュード9の地震の発生がもう少し遅かったら、この断層もずれ動いたかもしれない。将来的には危険ではあるが、それは何世紀か後の、次の海溝型超巨大地震の直前であろう。p.133-4

 だいたい、どこでも都市の近くに断層があるんだな。仙台は、幸運にも直下型地震を免れたかもしれないと。まあ、逆に、東北の引き伸ばしで地震が起きるかもしれないが。

 政府の地震調査研究推進本部は、南海トラフ地震活動の長期評価として、「平均発生間隔を88.2年」と算出し、「30年以内にM8〜9クラスの巨大地震が70%程度の確率で起こる」という長期評価(2016年1月13日)を出している。
 記録の信頼性を評価して1361年の正平地震以降の発生間隔は約90年から150年、これまでは最短で90年で発生。88.2年という値は、前の地震のすべり量(地盤の隆起量)と次の地震までの時間間隔が比例すると仮定し、求めた値だ。つまり、昭和の地震の規模が小さかったため、次の地震までの時間は短いと予測している。p.160-1

 へえ。昭和の南海地震東南海地震の規模って小さかったのか。それでも、日本の戦争遂行努力には割りと致命傷だったみたいだけど。