- 作者: 渡辺尚志
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/12/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
しかし、どちらも司法技術の限りをつくして戦っているな。小前百姓の一部を動かして上申書出させるとか、今でもやりそうなやり方。あと、最終的には、争点は旧村役人の不正会計問題に収斂しているが、それがうやむやになっているのがすごい話だな。そもそも、村役人の仕事でかかる費用は、役職者が立て替えて払って、後から清算という手法がこういう揉め事の源泉なんだろうけど。
最初から、藩側の対応が、「古役人」寄りの姿勢だった。それが、住職の息子が「貸していない」という証言から、形勢が一気に逆転する流れ。有利なほうについて、証言が二転三転する村人たち。金を取って、裁判を有利な方向に工作する人物の存在。
判決を言い渡す武家側にとって、武家の無謬性を明らかにし、権威を高めることが重要であったこと。そのため、判決の前に、関係者間で和解して、済ませる方が好まれた。また、判決に際しても、藩の体面や権威の維持が重要だったこと。判決に反抗的な態度を示す関係者がいると、逆に、権威の失墜につながりかねないため、司法関係者は入念に準備するとか、裁判のあり方が興味深い。