柴山元彦『3D地形図で歩く日本の活断層』

3D地形図で歩く日本の活断層

3D地形図で歩く日本の活断層

 全国各地の断層を紹介する本。なじみのない地域の断層も知ることができて、おもしろい一方で、かなりぶっきらぼうな本と言った印象も。地理院地図の3D地図をそのまま掲載しているが、3D地図の場合、等高線はかえって邪魔のように思う。カシミールとか、他にもソフトがあるわけだし。素材がゴロゴロとそのまま入っている感じが。あと、決定的に感じが悪いのが、ほぼ地元たる日奈久断層の項で、八代市を、前半片っ端から八千代市と表記していること。部分的には、八代市と表記してあるところもあるし、校正とか、どうなっているのだろう。こういうのを見ると、他の部分でも、地名なんかにかなり間違いがあるのではないかと思わざるをえない。
 いろいろと、断層に特徴的な地形というのは、わかってくるな。長野県大鹿村を通る、赤石断層なんかが代表的事例だけど、途中で峠に区分されながら、まっすぐ続く谷は、断層によって形成された可能性が高い。そして、そこを道路が通じていると。ここを通る、国道152号線は、途中で道がなくなる酷道として有名なルートだけど。徳島県吉野川の谷や、滋賀県安曇川の谷なんかも、この例だな。
 平野の際は、だいたい断層がある。横ずれ断層では、川が横ずれで垂直に曲げられている事例が多い。尾根が断層で断ち切られて、切離された地形を、谷部分をケルンコル、山地部分をケルンバットというそうだ。立田山断層によって、金峰山から切離された熊本駅北西の花岡山・万日山、その隣の独鈷山などは、まさにこの地形だな。断層を伝って熱水があがってくるため、断層沿いには温泉地が多いという話も興味深い。カルデラ壁の内側も、断層になるのだな。
 コラムもおもしろい。中央構造線が、2000万年前に活動し、低角度で痕跡が分かりにくい断層と、より新しい高角度で痕跡が明瞭に残る2種類の断層からなっている。あるいは、フォッサマグナが、シベリアや北極を横切り大西洋の中央海嶺まで続いているとか。