藤岡換太郎『海はどうしてできたのか:壮大なスケールの地球進化史』

海はどうしてできたのか (ブルーバックス)

海はどうしてできたのか (ブルーバックス)

 再読。
 読み終わったのが一週間くらい前で、いろいろと感想を忘れかけているな。
 海洋の形成から途中の事件を描いた第一部、第二部。海の組成の変化を追う第三部。最後は、数十億年のスケールで海がどう変容していくかを考える第四部から構成。
 しかしまあ、液体の水が、地表面に開放された形で大量に存在し続けているというのが、奇跡としか言いようがない気がするな。地球の歴史の中では、スノーボールアースのような危うい場面もあったわけだが。早い段階では、高い二酸化炭素濃度に対して、太陽のエネルギーが少なくて、水が蒸発しない温度に保たれた。
 光合成生物による単体の酸素の大量供給が、地球大気のみならず、海の組成も大きく変えた。水中からは鉄が一気に除去される。「最大の環境破壊」ね。超大陸の形成が地球を冷やす。あるいは、現在の地球環境におけるヒマラヤ山脈の影響の大きさ。モンスーンの始まり。さらに、パナマ地峡インドネシアの群島の出現による太平洋・インド洋・大西洋の分離。冷却装置としての南極大陸。熱塩循環も含め、現在の地球の姿って、意外と最近形成されたものなのだな。
 あとは、地中海が干上がっていたメッシニアン塩分危機も興味深いな。書籍が日本語訳されて欲しいところ。干上がっていた時の地中海はどういう環境だったのか。また、水が満たされるときに、どんなスペクタクルがみられたのか。
1_76 海の蒸発の記録:メッシニアン塩分危機1
海盆の蒸発:蒸発岩の堆積学とメッシニアン期地中海塩分危機


 第三部は、海を「鍋」に見立てて、含まれる成分がどのように変わっていったのかのお話。
 一酸化炭素や塩酸を含んだ、現在の生物にとって猛毒の海が、中和されたのか。火山から供給される塩素が、長石を風化して作られるナトリウムやカルシウムが河川によって供給され、結びついて、塩を作る。
 あるいは、マントルと地表の水のやり取り。プレートによってマントルに運び込まれた水が、トランスフォーム断層からあがってくる蛇紋岩や火山活動の水蒸気などの形で、地表に戻される。


 最後は海の行方。
 地球内部の熱量が低下していくため、プレート運動によって地表の海水がマントルに送り込まれる一方、地熱が低下し、含水鉱物から脱水し、マグマの形成が止まる。そのため、地表への水の戻りがなくなる可能性があると。7億5000万年前にも、海水がマントル流入して、海水が激減した時代があったと。
 ただ、地球内部の熱が減れば、プレートテクトニクスの動力も低下して、マントルへの「逆流」もある程度、調整されるのではないだろうか。

 誕生したばかりの月は、地球から約2万kmという近いところにあったようです。その頃の月を地球から見れば途方もなく大きく、まるでエウロパから見た木星のようであったかもしれません。その後は次第に遠ざかり、現在では月と地球の距離は約38万kmです。
 地球に近かった頃の月は、非常に大きな潮汐作用を地球に及ぼしていたことでしょう。たとえば地球に水の海ができてからは、潮汐力による潮の満ち干は現在からは想像もつかないものだったと考えられます。おそらくは大津波のような波が、毎日2回、海岸へ押し寄せていたはずです。この潮汐には、海水をよくかき混ぜて、海水の成分を均質にする役割があったものと思われます。それはのちの生命の誕生にも、大きな影響を与えていたかもしれません。p.41

 なんか、大スペクタクルだな。どういう世界だったんだろう。