真坂マサル『魔法密売人:極道、異世界を破滅へと導く』

魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く (電撃文庫)

魔法密売人 極道、異世界を破滅へと導く (電撃文庫)

 なにもかも掌からこぼれ落ちていくような、そんな破滅感のある話だな。主人公が、箱庭に毒を撒き散らしてしまったかのような。副題に「破滅へと導く」とあるが、続きが出れば、結局、カタストロフをまきちらしてしまうのだろうな。アンリカにどんな世界を「見せる」ことになるのやら。
 エルフの少女に「救世主」として召喚された主人公千潮。かれは、エルフの少女ルルルの一族の復讐と自分の世界への帰還を模索するうちに、「白国」の陰謀と深く関わる。ボタンのかけ違いが、どんどん広がっていくのが。白国のトゥルー王女とルルルを初め、ほとんどの主要キャラが退場と言うのが、なんとも。
 トゥルー王女は「離国」に流れ着いて戦争を主導しているようだが、何か人格に変容が生じたのかね。そうすると、修羅になった王女が主導する国と王女の幻に統治される国が戦争するという、救いのない話だな。
 異世界の重層性がないのがちょっと気になるな。