大規模農場の建設ラッシュと牧畜民のくらし――エチオピアにおけるランド・グラブの現在 - 佐川徹 - 人類学 SYNODOS -シノドス-

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 登記システムの不備を突いて、今まで用益してきた地元の住民から土地を奪う動きが進行している。日本がODA事業として行っているプロサバンナ計画も、ランド・グラブという批判を受けているそうな。
 南米あたりで、先住民の土地を奪った行為が、アフリカで焼きなおされつつある。国家の開発戦略の一環であり、エリートが「主体性」をもっているというのも、同様だな。


 ここでは、エチオピアの事例を紹介している。
 2000年前後から土地用益権の明確化が進んでいるが、牧畜地域ではそれが進んでいない。その遅れをついて、牧畜民が利用してきた土地が収奪されつつあると。
 そのような開発の理屈としては、雇用の創出や灌漑などの農業技術の移転が謳われるが、実際には地元住民は恩恵に与っていないと。雇用のほとんどは移民、水利施設も大農場の自己都合で運用され、アクセスできる人も少ない。農業施設の待遇の悪さも指摘される。


 また、大農場よりも、牧畜の方が収益率が高いというのも興味深いな。農耕限界地域では、無理にリソースを投入した農業をやるより、粗放な牧畜の方が、より適しているということか。つーか、サトウキビ農場とか、短期間で砂漠になるんじゃ。どちらにしろ、乾燥が激しい土地で、灌漑農業は遠からず、塩害が起きるだろうし。
 数年でつぶれる事例が多発しているとも。

エチオピアのマジョリティに共有された「牧畜は時代遅れの生業であり、定住化をして農業に従事することが近代化へ向かう正しい道である」という認識である。

 生産性がむしろ低い大農場建設が推進される理由として、上の認識があるそうな。しかしまあ、いまだにこんなこと考えている人がいるんだな。牧畜が盛んなニュージーランドやオーストラリアが「遅れた」国かという素朴な問いで無効化できそう偏見だな。
 もともと社会主義国だった国だし、いまだにマルクス主義に毒されているのか。もっと古い農本主義なのか。

仮に農場を支援するのと同程度の予算を、家畜市場や家畜生産物加工場の整備、獣医師の増員や家畜薬購入のための補助金などに向ければ、牧畜が国家経済へ貢献する度合いはますます高まるだろう。

 全く持ってその通りだと思う。