シャーマニズムという名の感染病――グローバル化が進むモンゴルで起きている異変から - 島村一平 - 文化人類学 SYNODOS -シノドス-

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 急激に「シャーマン」が増加していて、モンゴルの人々自身が戸惑っていると。
 もともと、モンゴルはチベット仏教がメインで、シャーマニズムブリヤート人などマイノリティの宗教だった。ブリヤート人は、ソ連時代の大粛清によって失われたアイデンティティの核にシャーマニズムを選んだ。特に、男性減少による混血の人が、「偉大な先祖霊によってシャーマンになれと要求されている」という解釈によって、シャーマンとなり、ブリヤート人としてのアイデンティティを取り戻した。
 現在、ウランバートルで流行っているシャーマニズムは、ブリヤートのものではないが、「個人に何らかの災厄が降りかかると「ルーツにねだられている」と解釈するブリヤート由来の説明様式(災因論)である」そうだ。神秘体験や修行、血縁を通じない、他者からシャーマンだと指摘される、接触感染型とでも言うべき、新たな様式のシャーマニズムが出現していると。
 「シャーマンになる」ことによって、想像上の社会的地位を得たり、親族関係内での力関係の逆転が起きている。
 また、このシャーマンの流行が、経済成長と貧富の格差が拡大する社会の中で、耐久消費財の顕示や学歴などの「名誉」をめぐる競争の中で、負け組のプライドの回復として機能しているか。
 こういうことが起きるのだなと。