「ターナーからモネへ:ウェールズ国立美術館所蔵英国の至宝」展

 やっぱ、モネいいなあ。「プール・オブ・ロンドン」、「サン・ジョルジョ・マッジョーレ、黄昏」、「パラッツォ・ダリオ」の三点が出品されているが、どれも良い。特に、「パラッツォ・ダリオ」の色使いが。


 国立美術館だけあって、全体に粒ぞろいな展示会。小品の風景画も、なかなか印象的な作品が多い。19世紀メインの、ロマン主義からポスト印象派に絞った構成も良い。個人的には、印象派に行き着く前。ロマン主義の風景画が好み。
 ロマン主義、リアリズム、パリのサロンとロンドンのロイヤル・アカデミー、印象派、ポスト印象派とその後と五部構成で、19世紀から20世紀初頭の英仏絵画の流れを紹介する。


 ロマン主義の作品に、好みの作品が多い。ジョルジュ・ミシェル「モーの眺め」、不詳「ノルマンディーの農場」、ジョン・コンスタブル「麦畑の農家」、ジェームズ・ホランド「フィリップ4世(美王)の王宮跡」あたりが印象に残る。ウジェーヌ・イザベイ「ノルマンディーの港」は、少し離れてみたときのハイライトが良い。
 ミレーの「突風」は、写実的なロマン主義の作品の中で、ちょっと戯画化したシルエットと色使いが印象的。


 リアリズムの様式になると、庶民の生活を描いた人物画が多くなる。あと、全体的に暗い絵が多い感じ。これは、当時の室内照明のためか、演出のためなのか。
 このセクションでは、スタナップ・アレクサンダー・フォーブスの「鍛冶場」が良い。外光と鍛冶の炉の二つの光源で、鍛冶屋の仕事場を照らし出す、光の感覚が。伝統的な、馬の蹄鉄を打つというシーンという題材の選択も良い。


 パリのサロンとロンドンのロイヤル・アカデミーでは、アンドリュー・マッカラム「雨後の秋の日差し、フォンテーヌブロー」、ウジェーヌ・ブーダンボルドー」、フレデリック・ウィリアム・フロホーク「ひまわり」あたりが印象に残る。「ボルドー」の船は、19世紀のクリッパーっぽい帆船がかっこいい。ワインを早く運ぶための船だったのかな。「ひまわり」は、花がいけてある花瓶が、日本の輸出磁器っぽいのがポイント。
 写生画でない、歴史画、中世の様式に倣ったとおぼしき作品が散見されるのが特徴。


 で、いよいよ印象派。やはり、モネ。他の作品としては、ウィリアム・ニコルソン「海岸の景色」が、小品ながら、色使いが印象的。あるいは、ジェームズ・チャールズ「埃っぽい道」、アンリ・モレ「クロアールの村」あたり。
 印象派になると、輪郭線を捨てて、グラデーションメイン。それで、空気の変化を複雑に描こうという志向か。個人的には、印象派より、その前の時代が好みかな。


 最後はポスト印象派。この時代になると、構成的になったり、色を強調したり。あまり、好みの作品はないが、グウェン・ジョン「教会で座る二人の女性」が、なんか現代のイラストでもありそうな親しみやすい作風。