佐藤克文・森阪匡通『サボり上手な動物たち:海の中から新発見!』

サボり上手な動物たち――海の中から新発見! (岩波科学ライブラリー)

サボり上手な動物たち――海の中から新発見! (岩波科学ライブラリー)

 手軽なボリュームで、サクサク読める本。動物の体に計測機器をつけたり、水中の音波を記録・分析する手法で、人間が観察しにくい水中や飛翔する生物の行動を明らかにするバイオロギングの手法で何が分かるか。
 人間の目で観察すると、自分の興味があること以外は意識から外してしまうのに対し、機械でぜんぶ行動を記録すると、「動いていない」ところも明らかにできる。そして、それらから、野生動物たちは、「適度に手を抜いて」生きていることがわかる。まあ、それはそうだよなあ。人間だって、常に全力疾走で生きているわけではない。


 バイオロギングによるデータの分析の試行錯誤の話も興味深い。最初の目論見と違うデータが収集されて、それをどう活かすか知恵を絞った。加速度のデータを視覚的に分析するソフトウェアも開発されているそうで。このあたりになると、わからなすぎて、逆におもしろい。


 バイオロギングに関しては、何冊か本を読んだことがあるけど、イルカやクジラの音響を分析する研究というのは、初めて読んだ。エコーロケーションで、周囲の状況を認識している。で、エコーの発信間隔で、どの程度の距離を「見ている」のかが分かる。他の個体の出した音で、周りを認識し、自分の発信をサボる。あるいは、捕食動物であるシャチは、作戦中の潜水艦のごとく、基本的に自分から発信することはなく、パッシブで獲物の音を聞いて、それを目標に行動する。あるいは、天草近辺では甲殻類が音をだして、やかましいので、低周波の強い音でコミュニケーションや感知を行っている。おもしろ過ぎる。