渡辺洋二『双発戦闘機「屠龍」:一撃必殺の重爆キラー』

 陸軍の双発複座戦闘機「屠龍」の戦記。どうしても、中途半端な感じがぬぐえないのが、屠龍の不幸というかね。割と好きな飛行機なんだけど、どうしても、スピードが足りない感が。あと、最初のコンセプトの時点で弱武装過ぎた感が。あれで、火力が高ければ、それなりに使い勝手の良い飛行機になったんじゃなかろうか。どうして、ああいうコンセプトの飛行機になったのかが気になる。やっぱり、エンジンの限界なのかね。
 つーか、B-17相手に火力が足りないから、戦車砲積もうという無理矢理ぶりがなんともはや。


 重爆相手には、相応の戦力になるが、単発戦闘機が護衛についたら、手も足も出ない。レーダーを積んでないから、夜間の戦闘能力も限られる。ここいらの使い勝手の悪さが、使用した部隊の評判の悪さの原因なのかねえ。
 B-29との苦闘が印象的。高高度を飛行する相手には、同じ高度に進出するので精一杯。後に、中低高度で作戦するようになると、それなりに善戦できるようになる。しかし、数の力で圧倒される。300機とか、500機の単位で来ると、高速のB-29への攻撃可能回数は数回。数百機のオーダーで迎撃に出ないと、対抗できない感じだよなあ。
 後継のキ96が採用されていれば、もうちょっとB-29迎撃も楽になった感があるなあ。結局、かなりの期間、中高度以下で作戦を行ったのだし。
 あとは、早期警戒網の欠如。迎撃機の上昇が間に合っていない感じがなあ。


 知識が増えてくると、以前読んだ時には気付かなかったところに興味がいくな。
 『日の丸の翼』で大戦も後半になってくると、最高速度が500キロに届かない爆撃機は、生還が期しがたくなり、屠龍が代替の軽爆撃機として導入されるようになると紹介されていた。爆弾の搭載量は少ないが、速度と固定武装で襲撃機としての適性はそれなりに高い。ニューギニア方面やフィリピンで、空港を連続的に襲撃して、敵航空戦力に打撃を与える作戦に投入される。
 あとは、フィリピン戦において、ネグロス島が陸軍の航空戦力の拠点だった状況など。