ざっぽん『真の仲間じゃないと勇者のパーティを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』

 リットさん、かわいいです。
 なんか、タイトルが妙に印象に残ったので、Web連載を読んだ後、文庫にも手を出してみる。文庫版は、特にレッドとリットが惹かれあうようになった経緯が、かなり加筆されていて、話の流れがスムーズになっている感じ。


 生き物に「加護」が与えられる世界。人々も、「加護」を授けられ、その加護がもたらす衝動と折り合いながら生きている。
 勇者の加護を持つルーティ・ラグナソンの兄、「導き手」のギデオンは、その加護の特性から、勇者の戦いについていけなくなりつつあった。同じパーティの「賢者」アレスは、ギデオンに対して、パーティから離脱するように言い渡す。自信を失っていたギデオンは、パーティを離脱。辺境のゾルタンに流れ、薬屋を開く。
 加護の衝動に従うのではなく、自分の心のままに恋人のリットや身近な交流を持つ人々の安全のためにしか戦わないというのが、この世界では異端である、と。
 そして、加護の衝動に縛られ、加護によって多くの感情も奪われたまま、「魔王」との戦いを続ける妹のルーティとの差。


 一巻は、基本的には、ギデオン改めレッドの日常生活。リットの押しかけ妻化の部分だけで、一冊の作品としてみると、盛り上がりに欠ける。そこで、リットとレッドとの因縁を持つ火術師ディルの顛末を付け足したといったところか。
 レッドとリットの関係が、より明確になって、完成度は上がっている。