イギリス海軍戦艦ドレッドノート: 弩級・超弩級戦艦たちの栄光 1906-1916 (オーナーズ・ワークショップ・マニュアル)
- 作者: クリスマクナブ,Chris McNab,平田光夫
- 出版社/メーカー: 大日本絵画
- 発売日: 2017/10/31
- メディア: 大型本
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基本的にはドレッドノートに始まる弩級戦艦、超弩級戦艦の発展の歴史。そして、ドレッドノートの構造と運用組織。そして、ベルファストに保存されている軽巡キャロラインの復元についての紹介から構成。こういってはなんだけど、普通の艦船紹介の本だなと。欲を言えば、もう少し、ドレッドノートの構造やら機関についての詳しい説明が欲しかったところ。あと、掲載されている当時の設計図などの文字がピンボケしていて、読みにくいのも残念。ただでさえ、筆記体は読みにくいのに。
掲載されている写真はいろいろとおもしろい。建造中の姿、巨大な送風用扇車、ボイラーなどなど。日本の艦艇のボイラーは、ヤーロー式を改良したタイプなのかな。数万馬力のタービンを動かすボイラーは、徐々に熱さないと、壊れるのな。あとは、11ヶ月で、完成に持っていった、このクラスの大型艦としては驚異的な建造スピード。
結局、この高価な巨大戦艦は、ジュットランド海戦を頂点として、無敵の座を滑り降りていく。魚雷・潜水艦・航空機といった存在に、自由な行動が許されなくなる。そう考えると、コスパ悪い兵器だな。あと、ジュットランド海戦で失われた巡洋戦艦が、砲塔から火薬庫に引火して、沈んでいると言うことは、他のところの防御は、それなりに有効だったってことなのかね。装甲が足りなくても、なかなか打たれ強いのが、弩級戦艦だった、と。
ラストの軽巡キャロラインの保存に関するレポートも興味深い。ジュットランド海戦に参加した艦で、現在も残っている唯一の船。20年代以降、係留訓練艦として利用された。しかも、2009年まで現役だったってのがすごい。大型の建物が付加されたり、様々な改造が繰り返されてきたが、オリジナルの部分も残る。このような、歴史的な経緯を尊重しつつ、どこをどのように見せるかが難しい、と。初期状態にあまりこだわらなかったのは、いいこと。
しかし、この保存工事に15億円調達できるってのが、うらやましい話だな。日本の保存船舶の現況を考えると。
アスベストが大量に使用されていて、それの除去に手間がかかったという話も印象的。断熱材として、広く利用されていたわけだが、健康被害とかはなかったのだろうか。