瀬畑源『公文書問題:日本の「闇」の核心』

公文書問題 日本の「闇」の核心 (集英社新書)

公文書問題 日本の「闇」の核心 (集英社新書)

 結局、公文書管理法の精神は浸透していなくて、しかも、骨抜きにしようという圧力が強い、と。暗澹たる気分になるな。安倍政権にいたっては、積極的に情報の歪曲・隠蔽に走っているわけだし。
 法律の雑誌に連載された記事をまとめたもの。それだけに、読みやすい。将来、検証できるように、きっちり残しておくことの必要性。また、外交などの問題で、ちゃんと文書を残しておかないと、相手側の主張に沿って歴史が記述されるようになってしまう。アジア歴史資料センターなんかは、その成功例だよなあ。


 官僚や歴代の自民党政権が、情報の操作を統治の手段として利用してきた。現在も、情報公開に積極的でない。特定機密法を使って、一般に公開しないまま、闇に葬る手段を得てしまった。それに対する監視は、充分ではない。


 後は、公文書館新館をめぐる話や新規ユーザー開拓の手段としての家系調査へのコミット。行政機構に関しては、曲がりなりにも情報公開が行われるようになったが、むしろ、国会の議員関係とか、司法方面の情報公開が進んでいない。国会の審議に使われた配布資料などが公開されていないのは、問題である、と。
 東京都の公文書管理条例の問題点。情報公開・公文書管理系だけでなく、法令全般に言えることだが、微妙な文言の操作がものすごく大きな影響を与えるあたりが、素人には敷居高いなあ。