誰でも行ける 意外な水源・不思議な分水―ドラマを秘めた川たち
- 作者: 堀淳一
- 出版社/メーカー: 東京書籍
- 発売日: 1996/08
- メディア: 単行本
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地理院地図と首っ引きで読んだが、刊行から30年でずいぶん、変わっているなあ。牧畜の衰退のためか、草原が減って、森林が増加している。一番変わったのは6-1蛭ヶ野高原東側の谷中分水界だろうなあ。分水界があったとおぼしき谷に、東海北陸自動車道が開通して、旧状をとどめていない。これはこれで、現在の分水界がどうなっているかという興味深い問題が提起されるかもしれないが。つーか、湧水の類いが破壊されて、コンクリの排水路になってしまっているだろうなあ。あと、この近辺の不自然に平坦な地形はなんなんだろう。地滑りか何かで、埋まった土地なのかな。
河川の水源というのは、点でなく、ある程度幅を持った面であると指摘するように、探せば起伏の少ない、行きやすい水源はいくらでもあるものだ。熊本だと、白川水源なんかが該当するかな。釜無川の女取湧水や八右衛門湧水なんかは、まさに、扇状地の集落近くの湧水だし、苫小牧川の緩やかな山林の枯れ沢に出現する湧水なんかは、いいなあ。
第二部の湖も、興味深い。カルデラの田代平と雄国沼の対照。あと、山頂近くの池って、やはり地滑り地がおおいのかねえ。名勝沼はまさにそのパターン。杖突峠の方もそんな感じが。つーか、杖突峠って、記憶にあるなと思ったら、リンちゃんが原付で超えたところか。
第三部の河川争奪とその後の分水界の話が興味深いな。浸食力が強い川に、上流を奪われる河川。浸食力が弱まると、元の谷が埋まって、高原が出来たりするのか。あるいは、下総台地のキワ、千葉市と大網白里市の境界あたりの河川争奪地形。ここいら、周辺にも、似たような争奪地形とか、平坦な分水界が連続していておもしろい。
加古川と武庫川と由良川、河川争奪だの、谷中分水界だの、大量にあるなあ。本書では取り上げられていないが、神戸市北区、三木市、三田市あたりの武庫川と加古川の支流群、分水界がものすごく錯綜していて、おもしろい。どっちがどっちに行くんだよという感じで。あと、不自然に直線的な谷とその中に分水界がある地形があるけど、複雑に断層が入り組んでいるのかねえ。
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3-4の栗柄峠が興味深い。河川争奪を、人工的な護岸が防いで、ニアミス状態にしている。で、不自然な同じ谷での河川の同居が発生。
似たような感じの地形が熊本にもある。
地理院地図のほうがわかりやすいかな。
(地理院地図より)
地殻変動で、不自然な地形になっている富良野、上富良野、美瑛あたりの河川の錯綜状態もおもしろい。富良野盆地の沈降や火山泥流で、まじまじと見ると、不審な川の流れが多くて、この地域、おもしろい。
もう一つ、四万十川の海近くから、内陸に向かって、その後南下する流れも興味深い。どうして、こういう地形になったのか。支流では、海側の川から、争奪されそうになっているところも。
つーか、四国は中央構造線に影響されて、全般的に川の流れがおもしろい。
あと、この地域では、四万十町興津を流れる後川も興味深い。本当に、海すれすれを流れている。ここも、浸食の状況によっては、流路が変わりそうだなあ。山が一つ立ち塞がっているのだが、こういう地形がどうしてできたのだろうか。
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周囲も含めて、おもしろい地形は尽きないけど、調べて、紹介するパワーがない。はてなブログ、地理院地図を貼り付けられるようにならないかなあ。そうなれば、地形の紹介は楽になるのだが。
あと、水の流れを表現する擬音が、いろいろと独特な表現なのも、見所。