川名登編『すべてわかる戦国大名里見氏の歴史』

すべてわかる戦国大名里見氏の歴史

すべてわかる戦国大名里見氏の歴史

 最近、なんとなく里見氏に興味があって、ちょくちょく本を借りている。
 この本は、とっつきやすそうなタイトルに相違して、事典的な本。里見氏歴代略記、家臣団人名事典、寺社一覧、城郭紹介、里見氏小事典、歴史散歩コース、文献目録などで構成。房総半島の土地勘に欠けるので、いまいち、楽しめないところが。特に寺社一覧とか。あと、城郭も、周辺地域の交通路などを知らないので、立地の意義などが読みにくい。地形図を見ながら、じっくり読めば良いんだろうけど、時間がかかるし…


 大枠としては、享徳の乱の際に、安房古河公方勢力圏に入れるために初代義実。その後、義通、義豊と嫡流は続くが、義豊代に、一族の義堯との内紛で敗れて断絶。義豊までを前期里見氏、義堯系を後期里見氏と称す。
 その後、北条氏と争いながら上総へ進出。途中、安房系と上総系の派閥争いが、家督継承争いに転化したり。豊臣政権下では、北条攻めの時に臣従。しかし、三浦半島への出兵で惣無事令違反の活動を行って、上総を没収。さらに、最後の忠義の代に、江戸幕府の大久保家改易に連座して、鳥取の倉吉にお預けの身になってしまう。嫡子がいなくて断絶。


 家臣団人名事典がおもしろい。戦国時代段階の家臣団に関しては、系統的な情報が存在しないのか。各種古文書や寺社の棟札などに記載された名前が、散発的に拾えるが、それが地域のなかでどういう位置を占めるかはわかりにくいということか。
 系統的な情報が残るのは近世に入ってから。慶長年間に複数作成された分限帳と後代の里見家臣族譜が系統的な情報を提供するようだ。
 正木一族を別格として、足立氏、安西氏、石井氏、印東氏、上野氏、宇部氏、大嶋氏、岡本氏、糟屋氏、加藤氏、黒川氏、佐久間氏、真田氏、高梨氏、角田氏、早川氏、本間氏、安田氏、吉田氏あたりが、まとまって家臣を出している一族という感じなのかねえ。
 1000石以上の大身は、大体一門衆かそれに準ずる正木氏一族の人間が多い感じ。堀江頼忠が、里見当主の近親ではない例外かな。
 百人衆(50石)足軽小頭(100石)、中小姓頭(150石)、使番十人衆(200石)、組頭二十人衆(200石)と割とシステマチックにランク分けしてあるのもおもしろい。


 小倉文書の負債を免除する印判状というのが、土豪を列挙していて興味深いようだ。