『ミリタリー・クラシックス』Vol.65

 特集はP-51ムスタング駆逐艦島風。読書ノート未処理がだいぶ減ってきたぞ…!


 第一特集は、第二次世界大戦列国最強戦闘機と名高いP-51ムスタングの特集。なんというか、優等生は優等生らしく、ソツがないという感じだなあ。
 ドイツの再軍備など、国際情勢の緊迫の中でアメリカ軍も近代的戦闘機の急速整備が必要になる。その目玉であるP-38、P-39のストップギャップを埋める形でカーチスP-40が大量に生産される。自国の航空機生産が進まないフランス、そして、アメリカ自身の需要の前に、出遅れたイギリスは、他の企業でのライセンス生産を行う必要に迫られた。そこで、ノースアメリカン社にライセンス生産を持ちかける。そこで、ノースアメリカンは自社での新型生産を提案する。ライセンスでの転換生産には、数年のレベルで時間がかかることを知っていたイギリス側は、短時間に新型機が投入されるならそちらの方が良い同意。そもそも、P-40Dを基準として考えた要求性能はそれほど高いものではなかった。一方で、航続距離はそれなりのものが要求され、それが後の長距離戦闘機としての活躍を可能とした。
 アリソンV-1710からマーリンエンジンへの交換も、P-40向けのを転換することが検討されていた自然の流れ。そこに、二段過給器装備のマーリン60が出現。P-38でも換装が検討されていたほどで、ある種必然的な動きであった。
 あとは、軽量化計画によるH型以降とか、B-29に随伴しての長距離渡洋飛行が単座戦闘機では限界に達したため、復座化して航法を楽にするツインムスタング計画とか。
 個人的には、ファストバックを装備したB型までのムスタングが好きかな。かなり厚い外板を使用しているため頑丈だったとか、リベットを削り取り、その上にパテ仕上げをしたツルツルの主翼表面が高速性能を可能としたが、一方で生産性を下げてしまった側面も。とはいえ、ここを雑に作っても、高性能の戦闘機なんだよな…


 第二特集は、孤独な韋駄天、駆逐艦島風
 特型以降の系譜を引く、高速で、高火力、重雷装の究極の駆逐艦。しかし、太平洋戦争の戦場に求められたのは、打たれ強く、対潜・対空能力が高い松型というのが、皮肉だよなあ。一隻だけじゃ、他の駆逐艦と戦隊を組めないし。
 試作的な位置づけの艦らしく、出来が良く、スペシャル感のある船だったようだが。
 キスカ島撤退作戦、巡洋艦や空母の護衛、マリアナ沖海戦での空母護衛、サマール海戦では武蔵の沈没後、快速を活かして追いついているが、燃料切れになりかけるというエピソードも。
 最終的には、レイテ島への輸送作戦の途次で、米軍機の攻撃を受け、至近弾、機銃掃射で力尽きて沈没。直撃を受けなくても、累積ダメージで沈没。レイテ島に漂着して、最後はマニラで全滅。450名の乗員中、生きて帰ったのは50名弱か…


 以下、コラム・連載:
 すずきあきら「WW1兵器名鑑」。第16回はロシアの重爆撃機イリヤ・ムーロメツ。かのシコルスキー設計。最初は旅客機として設計され、大戦勃発で爆撃機用に再設計。重爆撃機の嚆矢となった。73機生産。1920年ごろまで使われたという。


 吉川和篤「知られざるイタリア将兵録」。今回は、山岳部隊のエピソード。デビューは第一次世界大戦の1915年。第二次世界大戦を契機に、改めて編成される。『モンテ・チェルビーノ』大隊は、雪中偵察やパトロールなども可能なスキー技術のエキスパートを目指した。
 アルバニアでの山岳戦、1942年ロシアの冬の平原での戦闘、そして雪解け後は精鋭歩兵として火消し役に投入。ロシア軍の突破の前に壊滅状態で帰還、解隊。
 戦後、特殊部隊として名前を継承する部隊が編成されている。


 松田孝宏「この一艦」。今回は第一次世界大戦中に建造され、退役。その後満州国海上警察隊に譲渡、「海威」と改名。その後、日本に貸与されて海上護衛に従事。最終的に、那覇港で米軍の大規模空襲に遭遇。撃沈。なんとも、劇的な経歴だな。


 野原茂「蒼天録」。日本航空の初期の初期。フランスからフォール教育団を招聘して、陸軍航空隊の原型が形成された。その前後に、フランスから導入されたニューポール24C1戦闘機とスパッド13C1戦闘機、サムルソン2A2偵察など。
 ごく初期には、フランスの技術に依存しまくっていた。


 白石光「特殊作戦行動」。今号では、ノルマンディー上陸作戦を支援する作戦。掃海が済んだ安全な航路を示す航海用ビーコンを、ドイツに悟られないように設置すべく、特殊潜航艇Xクラフトで潜入。危険を冒して、船団を導いたエピソード。


 内田弘樹「栄光なき敗者の栄光:第62回:秘録・第五十一戦隊小史」。海防艦などの大戦訓練を支援する、潜水艦部隊のお話。標的役の潜水艦は重要であった。元Uボート呂五〇〇や大正時代建造の旧式潜水艦呂六二や呂六八が関わった。


 白石光「世界の軍用銃 in WW2」はイギリスのランチェスターサブマシンガンダンケルク後の兵器不足の中、海軍部隊に配備するために生産されたサブマシンガン。ドイツのMP28をコピーしたため、信頼性は高かったという。また、重いため、命中率も良かったとか。とはいえ、10万挺に届かない生産数だった。