伊東京一『凶腕の獣、樹海の鬼:森林保護者フェイ・リー』

 ずいぶん久しぶりの新刊。「ラノベの杜」を何気なくチェックしていて、その他のところで見つけて、興奮してしまった。何しろ、タイトルからして、デビュー作『Biome』の世界観を引き継ぐものだし。
 実の兄に裏切られた男が、復讐のため、何かも捨てて追いかける連作短編集。
 寄生虫使い同士の争いは、エグい。どちらも、自身に寄生虫を植え付けて、異形となりつつ、常人には使えない力を使えるようにしているあたりも。そして、復讐の終わりはむなしいものでしかない…


 第1話「家鳴り」は物語の導入。主人公フェイがどんな人物かを紹介する。第2話で、メインとなる寄生虫を使った争いの紹介と宿敵の存在を匂わせ、第3話で実際に何が起こったかを詳しく描く。ハイエナに襲われ全滅したキャラバンの中で、フェイの兄ジウェンの自然を扱う才能だけで、生き延び、救出される。救出した人物は、真森人の子孫で、バラモ王国の裏を担う「籠」に導師であった。籠で養育され、森の知識を育んだ兄弟。しかし、籠の宮楽舞のソンファと出会ったときに、運命の歯車は狂い出す。相思相愛になったジウェンとソンファ。しかし、ソンファは「臥虫」に侵され、隠されていたのだった。フェイを囮に、ソンファを連れ出したジウェン。臥虫を使って籠に復讐すること必至と見たフェイは、脱獄して、ジウェンを倒そうとする。
 残りの2話は、徐々にジウェンの元に近づき、最後の戦い。しかし、ジウェンとフェイの復讐の結末は…


 復讐の先を考えていないフェイ、どうなるんだろう。最終的には腕を切り落とさなければならない、バザルト孤虫による毒手。さらに、籠に追われる身。隻腕で、戦闘力が低下した状態で流れのフォレストセイバーを続けていくのも難しかろうし。
 それでも、出てくる復讐者たちの中で、フェイはまだ理性的とも言えそうだが…


 とりあえず、「Biome」を読み返したいが、どこに埋まってるのか、探すところから始めないと。春から延び延びになっている書棚の設置を行わないとなあ。
 あと、伊東京一氏の本、たいがい買ってるつもりだったけど、ウィキペディアを見ると、見覚えのない本が2冊ばかりあるな。今から手に入れるのは大変そうだが。