笹本祐一『星のダンスを見においで』

星のダンスを見においで (ソノラマノベルス)

星のダンスを見においで (ソノラマノベルス)

 新版のほう。「モーレツ宇宙海賊」みて、「ミニスカ宇宙海賊」のジェネリックとして召喚。アニメだけ見た印象で言えば、茉莉香と唯佳、ライザとミーサ、アルピナとシュニッツァーとか。もちろん、平凡な女子高生が、隠棲していた大海賊に導かれて宇宙に出て行くというストーリーと遠未来の植民惑星の高校生が、直系相続の海賊船の船長資格がありますと知らされるのでは、突然物語に巻き込まれるにしても、ずいぶん話の流れが違ってくるが。後者は、登場人物が多いだけに、群像劇になっているし。


 本書は、平凡な女子高生である冬月唯佳が、「笑う大海賊」の秘宝の争奪戦に巻き込まれるお話。なじみの古道具屋の店主が実は元宇宙海賊で、秘宝のありかを秘匿するために故郷の地球に隠棲していた。そこに、かつての部下、海賊船グレイハウンドの船長アレックスが押しかけてくるところから、物語が始まる。関係者と誤解されて、人質にされたりすったもんだがあった末に、自身の平和を守るために、秘宝を何とかしにいった宇宙へ飛び出す。宇宙海賊たちが連合を組み、同じく秘宝を狙うヴィン・シュピーゲル率いる銀河中央星系連合の艦隊と戦うことに。集中攻撃で大破したヴァイパーの修理しつつ、追撃をしのぐ逃避行の体験を通して、宇宙に魅せられ、自分で宇宙を好きなように飛ぶべく、宇宙に出て行く。
 結局、秘宝の効果って、どうなったんだろうなあ。「みんな幸せに」なんて願い、いかに「奇跡のノウハウ」でも無理難題だと思うのだが。


 初出の文庫版からは、下巻部分、「笑う大海賊の秘宝」争奪戦の部分がかなり加筆されている。これはこれで、悪くないが、個人的にはぶつ切りの文庫版も嫌いじゃない。ジャックが集中治療中に、唯佳が海賊有志たちと修理しつつ、逃避行する部分は割と楽しい。
 一方で、紅クロスでの、ヴィン・シュピーゲルとの通信機器ごしの接触、彼の謎キャラ感はでるけど、艦隊司令官が占い師に化けて商売とか、そんな暇なことできるのだろうかという感じも。