若林純『寺社の装飾彫刻:中国・四国・九州・沖縄編』

寺社の装飾彫刻 中国・四国・九州・沖縄編

寺社の装飾彫刻 中国・四国・九州・沖縄編

  • 作者:若林 純
  • 発売日: 2014/05/12
  • メディア: 大型本
 途中を飛ばして、熊本含む西日本編を借りだし。岡山・鳥取以西の中国地方と四国・九州の装飾彫刻を収録している。
 伊東龍一「極東の国の西側ではぐくまれた彫物」、山田岳晴「寺社建築への彫刻の導入と発展」の解説二編に、中国地方、四国地方、九州地方の三編の写真ページの構成。
 前者の解説は、西日本は、大陸からの影響と関西・江戸からの影響、そして自律的発展の三つの流れが交ざってできている。青井阿蘇神社の独自性、大型パネル状彫物の先駆である柞原八幡宮、そして、南九州の龍柱といった独自モチーフの存在。
 後者の解説では、、江戸時代初期には彩色彫刻で、後半以降には素木の彫像へと変化していくという流れを紹介。


 寺社彫刻って、江戸時代の物と思っていたが、意外と明治時代の作例も多いなあ。そういえば、比較的最近の神社でも、昔のほど派手ではないが、部分的な装飾彫刻はあるもんなあ。細々と彫り込んである超絶技巧から割とおおらかな作品までいろいろ。二十四孝や仙人、日本神話、著名な武士と龍や獅子、花といったモチーフが多い。
 高知県仁淀川町百川内の河嶋山神社拝殿のヨーロッパ調の人魚、長崎市の松森天満宮瑞垣の職人尽し、大分市今町の丸山神社楼門の寄進者である商人小倉屋の仕事風景、大分県国東市の八坂社・富来神社の十二支方位盤あたりが、題材としておもしろい。
 佐賀市川副町詫間の正傳寺の本堂は1996年に再建。欄間彫刻は日蓮聖人の生涯や法華経から採られたものだそうだが、彫刻作業は中国に発注している。この手の職人仕事を現実的な予算で実現するのは、日本人に発注しては無理なのかな。熊本でも加藤清正銅像を台湾に発注していたし…


 熊本県内の寺社では、二ページを占めるのが、玉名市の繁根木八幡宮、人吉の青井阿蘇神社、八代の妙見宮の三つ。このうち、青井阿蘇神社は、水害で当面、行けそうにない。
 一ページでは、宇城市三角町波多の波多神社本殿、菊池市旭志弁利岩本の岩本菅原神社本田、菊池市下河原松島の阿蘇四宮神社本殿の三カ所が紹介。あとで、場所を調べておこう。