藤丸『ユアソング』

ユアソング (WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL)

ユアソング (WANIMAGAZINE COMICS SPECIAL)

  • 作者:藤丸
  • 発売日: 2020/01/07
  • メディア: コミック
 水没しつつある町で、亡くなった彼女と会えるお盆の季節を待ち続ける男の話の完結編、および、同じ世界で必死に生きる人々のお話。滅び行く世界でも、どっこい人は生きている。明るいポストアポカリスプな世界観だな。
 あとは、幽霊や動物たちとの距離の近さというか。


 とりあえず、テニスに試合に勝ちたいという未練をもった幽霊の青年と、一夏エッチしながら試合を繰り返す「供花の庭」が印象的だな。スポーツ人口も激減する中、1人でテニスに打ち込んでいた少女の叶わない恋心。
 ポニテにサンバイザー、ポロシャツにミニスカがいいですね。


 エロマンガとしては、「青年期の憂」、「幸福期の隣人」、「金糸雀の坂道」あたりが好きかなあ。物語を重ねるごとに、背景世界が変化していっているのも印象深い。
 「青年期の憂」では、沈みゆく港町の滅びと同時に火星のテラフォームに目処がつく。幼なじみの少女との将来を描く少年と、遠慮がちな少女の2人の物語。見開きで2人の人生を描き込んでいるのが印象的な演出。
 「金糸雀の坂道」では、軌道エレベーターが建設され、衛星軌道上にコロニーが設置。そこで火星移住を待つ人々がいるが、隕石衝突事故で多数の脳に障害を抱えた人が発生するという背景ストーリーのなかで、記憶を失った元夫婦が、再び出会う。火星に移住できる人間が「選別」されているってことだよね。


 そして、最後は「8月の灯」の完結編。ひろくん、あんた死んどったんかいw
 長い時間が経って、登場人物達もおそらく命尽きた後、自らの死を自覚することなく紗和を待ち続ける「ひろくん」。そのありさまがあんまりだと感じる担当編集は、であったシスターっぽいアンドロイドに後事を託して逝く、と。
 アンドロイドに最後を看取られる人類文明みたいな感じか。エロマンガで無茶をする。