鳥羽徹『天才王子の赤字国家再生術:そうだ、売国しよう』

 2巻で読むのが止まっていたシリーズの攻略再開。前の方がすっかり頭から抜けていたので、最初から読み直し。


 大陸北辺の小国ナトラの王子にして、病気の父王に代わって摂政になったウェイン・サレマ・アルバレスト。次代の名君として期待を集める彼だが、実は、財政も人員もかけたナトラに見切りをつけ、いかに、穏便に帝国に併合されるかを密かに考えていた。
 新任の大使と話を付け、帝国式の軍事教練を行わせ、いわば兵を手土産に帝国への帰順を考えていたところ、皇帝の急死、そして、その後継者争いが発生。帝国軍は撤退し、ナトラは一方的な利益を得たことになってしまう。
 さらに、隣国マーデンの侵攻に対し、ほどほどに勝ちたいところを、大勝。その勢いで、隣国の要衝である金山を占拠。金山をめぐる攻防戦を始めたら、今度は隣国の隣国の侵攻で、いきなりマーデン滅亡。
 はったりをかけたら、次々と思惑と反対の方向に転がっていって、なんでだーと転げ回るウェインが楽しい。


 売国して、安楽な生活をと目論むウェインが、策に溺れて、重荷をガンガンと背負い込んでいくのが楽しい一作。